ENTREVUE BLOG

「ナギ」ですが時にはあらぶり「エンタメ」「すきなこと」について書く。演劇・宝塚・映画・本、アート・旅行等娯楽、趣味の話とたまにの真面目コラム。

猛暑に生まれた濃厚で新鮮なラテンショー!@宝塚雪組『Gato Bonito!!』 ~ガート・ボニート、美しい猫のような男~

凱旋門と併演ショー、『Gato Bonito!!』のレビューをお届けします。藤井先生のイケイケ3部作(確かご本人談)と言えば、『EXITER!!』シリーズ、『Appasionade!!』シリーズ、『CONGA!!』。いずれも再演されたり、ショーの名作として語り継がれている作品ですね。個人的にもスカステで放送があるとつい見てしまう、大好きな作品ばかり。今回の『Gato Bonito!!』もイケイケ四部作としていいのでは?という位、アツく、激しいショーでした!

 

公式情報

かんぽ生命 ドリームシアター
ショー・パッショナブル
『Gato Bonito!!』
~ガート・ボニート、美しい猫のような男~
作・演出/藤井 大介
ポルトガル語で“美しい猫”を意味する“Gato Bonito”。クールで気まぐれな性質、気品溢れるしなやかな身のこなしなど、猫からイメージされる姿を望海風斗率いる個性豊かな雪組生達に重ね合わせ、バラエティ豊かな場面で構成する華やかでドラマティックなラテン・ショー。宝塚歌劇ならではの、ゴージャスで熱い夢の世界をお楽しみ下さい。

ショー・パッショナブル 『Gato Bonito!!』~ガート・ボニート、美しい猫のような男~

雪組公演 『凱旋門』『Gato Bonito!!』 | 宝塚歌劇公式ホームページ

 

全体とトップコンビ中心に

ダイスケ先生お馴染み、「あなたは〜〇〇〜」といった歌詞の歌で始まる幕開け、今回は組長梨花ますみさんが担当、可愛いニャンコちゃん達引き連れております。咲ちゃん(彩風咲奈)が銀橋から登場、男役勢揃いから、なんともムーディーに一人寝そべりながら登場するだいもん(望海風斗)。ねっとりした非常に濃密な空気を纏い、でもどこか気まぐれで淫靡な雰囲気はまさに「美しい猫のような男」。

作曲家咲ちゃんと猫のひらめちゃん(朝月希和)…からの猫達のラインダンス、だいもんがアドリブ力試される『黒猫のタンゴ』(ヒロシです、みたい…)のようなコミカルな場面もありますが、各場面から受ける印象は非常に色っぽく濃厚なものばかり。全体的には非常に「大人のラテンショー」と言った趣きでした。男役として充実期のだいもん雪組に相応しい内容だったと思います。

相手役真彩希帆ちゃんは、タンゴクラブで男役達を冷たくあしらう様が特にカッコ良くて「ヒュ~!」って感じで(笑)好き。あとはこのコンビならではの中詰め後の歌合戦『コパカバーナ』ですね!だいきほコンビは関係性がフェア。どちらに寄りかかる、というより互いが独立してバチバチやってる様が一番よく似合います。

場面構成自体は目新しい、というより、どの場面をとっても従来のフォーマットをほぼ踏襲している(幕開け、二番手場面、中詰め、総踊り、男役群舞、デュエットダンス、フィナーレ…)印象です。ただ、衣装(浅黒い肌に白い衣装)、男役×娘役の組み合わせ(上級生娘役と下級生男役)や歌手のピックアップ(新たな歌ウマさんに、意外な組見合わせ)、繋ぎの場面(新進スターとベテラン上級生)、ダンスの振り等でとても新鮮に思えました…!!

ダイスケショーのザッツ定番、「男役の女装」もあり…!雪組が誇る、2~4番手の美形男役の皆様、背中がざっくり開いたパンツスーツ、しかも地毛のショートでなんて…!これまでの「女装」感あるあるの「男役の女装」の衣装と違う扮装が新鮮…!!(これ着こなし難易度高すぎでは?)

総踊りがダイスケ先生がよくやる「破壊と再生」的なものではなく、土着的な踊りに徹底したのも良かった。(というかホッとした)振り自体もこれまでのいわゆる「宝塚に近しい振付家のそれ」ではなく、外部の振付家ならではの身体を駆使した激しいもので、これまた新鮮でした…!!

という訳で「新鮮」連発してます。

 

このショーの新鮮さについてさらに突っ込む

藤井大介先生、最近は「えっ、また総踊りで『破壊と再生』」するの?やっぱ男役の女装が見せ場なのね…みたいな自己模倣感強い作品が多かったように思います。

割と最近だと『HOT EYES!!』や『Sante!!』も個人的には好きだったけれど、客観的に見たらダイスケ先生スランプ…?って感じの、悪くはないんだけど、まあこれ、いつぞやもやったよね…この演出必要ですか…この作品このトップでやる意味ありますか…って部分もあったかと。

今回が良かったのは、大人の男役がやれるだいもん(と相手役の真彩ちゃん)にしっかりアテガキされしかも組子への目配りがすこぶる効いている点だと思います。

最近だと星組『Killer Rouge(キラールージュ)』 も組子によくアテガキされたショーでしたが、このショーの組む相手や歌ウマピックって、割と組ファンならお馴染みメンバーだったんですよね。大体男役と娘役が組む相手って、いわゆるスター格はスター格とだし、学年近い同士のことが多い。

今回は、上級生娘役と下級生男役で組ませていたり、新進スターの顔見せ的に使われることが多い「繋ぎ」の場面に別格上級生も配したり、デュエットを歌うペア…等々、顔ぶれがこれまでのショーの「普通」と「違う」。

先のヨシマサ先生作のショー、個人的にも大好きでした。でも、今回のような「スターの組み合わせや抜擢を楽しむ」…印象はなかったんですよね。曲は割と定番押さえたな、という印象でしたが、それでも「なんかどっかで観た…」感が(わたしには)ありませんでした。猫モチーフ自体は昔「美麗猫(ミラキャット)」というショーがあったようですけど(映像でも未見)、このショーは(猫耳使ってますが)あくまでも「美しい猫のような男」がテーマで、それは場面づくりにちゃんと現れていましたから。

「だから」新鮮で良いショーだったと思うのです。

スターについて

タンゴクラブでカリ( 煌羽レオ)とすわっち(諏訪さき)が一緒に歌っている…!ことに感動しました。だってカリさん決して歌ウマさんではない。でもすごく特徴ある声をしていて、下級生ながらよく芝居でソロ貰っている歌ウマすわっちと併せると、あら不思議、この場面にぴったりくる…!

「男役の女装」メンバーが次々だいもんと絡む場面での歌手、「あら、あの子とあの子が!」と顔ぶれが新鮮でしたし、ラストに「また」ヒメさん(舞咲りん)と叶ゆうりが組んでいる…!と自分の中で出落ちとツボ感凄いし(笑)、心が忙しかったです。あすくん(久城あす)芯で歌う場面なんて、周りにまなはる(真那春人)、カリ、あゆみさん(沙月愛奈)、ひーこちゃん(笙乃茅桜)なんですよ!今回はこ、こういうの見たかった…!!という短くも見応えある場面で嬉しくなっちゃいました。みんな舞台でつい追っちゃう実力派別格男役娘役さんですからね。キャリアを思えば納得だけど、新鮮な人選、尊い…!

同じく繋ぎの場面であーさ(朝美絢)に8人の豹柄(露出度高め)のお衣装の娘役さんが絡む場面、羽織夕夏ちゃんや希良々うみちゃんみたいな下級生のかわい子ちゃんが入ってるのもヨイ。なんせみんな普段の可憐なイメージと違う超セクシー衣装なのでドキドキ…!!あゆみさんと縣千くんはじめ、ベテラン娘役さんと新進男役さんが組んでいるのも、本当に新鮮でした。(今回は新鮮連発でお届けしてます)極め付けがエトワールに愛すみれさんですからね!パンチ効いてます!

おわりに 

ダイスケ先生、今回長年のスランプちょっと打開したのでは!と、感じました。初心に帰り、スターで魅せた今回のショー。場面構成自体は伝統を踏襲しながら、スターの顔ぶれでこんなにも新鮮になるのですね。

芝居はキャラがそれなりに立っている役を演じられる生徒さんって、多くてもせいぜい10そこそこ。でもショーはひとりひとりが「芸名の自分」として立てるのだから、どんな場面でも1人ひとり輝いていて欲しいし、むしろファンとしてはそれが超見たい!タカラヅカはどんな立ち位置でも絶対見てくれているファンがいますしね。

座付き作家の仕事は言ってみれば、「スターを輝かせる」こと。

路線スター、新進スター、若手、歌ウマ、ダンサー、それぞれの個性が放つ輝きが見たい。『Gato Bonito!!』の各スターへのアテガキは、どこもとっても適材適所。「座付き作家の仕事!!」なショーでした!

惜しむらくはわたしが雪組子識別能力が低め(席も遠め)なため、黒塗りだとやや顔判定に時間がかかったことです…(苦笑)。黒塗りショーの是非については個人的に思うところもありますが(過去記事:演劇におけるブラックフェイス問題と「Cultural appropriation」について。 )、芝居の物足りなさを吹き飛ばす、とっても楽しい猛暑の観劇となりました。

では、今回はこのあたりで。

ナギナリコ

 

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