DQNのバイブス感じる一作@脚本三浦大輔 監督大根仁『恋の渦』
今日は久しぶりに面白過ぎた映画のレビュー等を。
『モテキ』『バクマン。』等で特にサブカル界隈から人気ある映画監督大根仁さんと演劇ユニットポツドールの三浦大輔さんがタッグを組んだ一作、『恋の渦』。
上映当時話題になっていたのは知っていたのですが、見逃していてこの度初見。最高に面白いかったし「これがDQNのバイブス…!!」と三浦さんの描写力にえらく感動しました。大根監督作品あまり外れないですね。どれもオモシロイ。以下あらすじです。
部屋コンに集まった男女9人。イケてないオサムに、カノジョを紹介するのが、今夜の隠れテーマだ。しかし、やってきたユウコのルックスに男は全員ドン引き。それでも無理矢理盛り上げようとするが、全てが空回りし、微妙な空気のままコンパは終わったはずだったが・・・。その夜を境に、男女9人の交錯する恋心と下心、本音と嘘が渦巻き、ゲスでエロくておかしな恋愛模様が繰り広げられていくのだった。
『恋の渦』公式サイト。「モテキ」の大根仁監督が三浦大輔(ポツドール)の原作を映画化!
内容的にはまああらすじ通りで、時間は経過しても終始室内(コウジとトモコの部屋、タカシとユウタの部屋、オサムの部屋)だけでの会話劇となっています。
では登場人物。
タカシ(26) 根ねがピュア、金髪 ユウタと地元からの付合い、カオリが気になる
ユウタ(27) 金髪 タカシを泊めている 実は…
コウジ(27) 金髪短めもじゃもじゃ、ナオキの兄、トモコと同棲中 実は…
ナオキ(23) 黒髪コウジの弟、
オサム(28) メガネリーゼント
カオリ(26) ボブヘア、ユウコの友達、ビッチ 実は…
サトミ(21) 女子大生 ナオキと付き合ってる 実は…
ユウコ(26) 篠田麻里子似疑惑、ブロックヘアーロング
トモコ(28) コウジの彼女、同棲中 実は…
公式サイト見て頂くとわかるんですが、みんなごりごりのギャル、ギャル男で見た目を作ってて、とにかくインパクトがある。
DQNのバイブス映画
そしてそこで繰り広げられる会話、「バイブス」「鍋パ」「~じゃね?」等終始軽い…とにかく軽い…なんかこう、ふわふわ掴みどころのない、言いてみれば「知性が感じられない」「バカっぽい」「軽薄すぎる」会話をノリと勢いでやって、そこに友情、恋愛のゴタゴタが絡んでくる感じなんですよね。
ギャルとギャル男とすでにお付き合いはあまりないのですが、あ~~ギャルとギャル男ってこういう感じよね、みたいなテンポ感の良さが輝いてる作品。
見始めて最初こそ、ギャル、ギャル男達に戸惑いしか覚えず、人間関係のゴタゴタ話が出てくる度、そ、そこ大事なとこ…?拘るとこ??(苦笑)…という感じでしたが、だんだんそれぞれの人間関係の「秘密」も明らかになってきて、どんでん返し要素もあり、おおっ、オモシロイ…!!と。「ただの日常」なんですが、「ちゃんと」エンタメですね。
共感できない人間に共感する楽しさ
そしてじぶんとは普段縁遠い、ギャル、ギャル男の話なんですけど、
「こういう人間いるよね…」
「こういう女(男)いるよね…」
「こういうタイプとは付き合いたくないよね…」
「これ、こういう展開になるんじゃ…?」
のように人間関係に対する共感と、自分の環境に当てはめ、あれこれ考えたり、結末・展開予想するのだってタノシくなっちゃうんですよ。
なんだかんだで2時間飽きずに見ちゃたな、という楽しい映画でした。
ゲスいですけれどね。
結末はちょっと予想できたかな、順番に当てはめていくとそうだろうな~と。
キャラクターについて
公式サイトよろしく、見た目からして相当尖っているキャラばかりなんですが、個人的主観で嫌いキャラを述べさせていただくと、男性は圧倒的にオサムがダメでした。女性はやっぱりカオリかなあ。
※以下キャラやその後の展開についてネタバレ(ちょっと下品)
オサムのユウコに対する態度、ユウコに対する周りの態度、男性陣やカオリが最強に嫌でして。ユウコと関係を持っておきながら、ユウコと友だちでいながら、一方は周りにユウコがけなされているから、自尊心が満たされず、ユウコと付き合っていることを隠し、一方は友だち付き合いしながら陰でバカにしている。その「人間的にちっちゃい感」がダメ…。カオリはうん、こういう子はいますよね…的な、「絶妙なルックス」で「男女関係での立ち回りの仕方」「友人関係の立ち回りの仕方」があざとい。こういう超「したたかタイプ」はやっぱり苦手に思っちゃう…トモコも苦手と言えば苦手ですが、うーん、役者がこれまた絶妙に「うざい」「めんどくさい」ギャルを演じきっていて、そこに関心してしまい、そこまで思わなかったかな。ユウコのルックスはそんなダメなのかなあ…と思っちゃった。ちょっと下品でつつしみない感じはあるけど、明るいしスタイル良いし一途だし良い子じゃん、って。本命彼女キープしながら、将来についてはしたたかでいて、上手く立ち回ってるコウジも嫌です。でもやっぱりナオキが最高に嫌だった。タカシとユウタの友情に少しホロリとしてしまったり、でもタカシはいいやつでこの中ではいちばんマトモそうだけど、絶対モテないだろうな…と思ったり。
周りにもうギャルやギャル男なんて絶滅危惧種のはずなのに、こんないちいち「いるいる~」感を会話で作れる三浦さんは凄いな、と。
役者も。本来は別にギャルやギャル男ではないだろうし、すごいな。
これまでの三浦大輔作品
ポツドールの三浦さん、現在は舞台より映像での仕事に力入れておられまして、
役者のこれまた身体はった演技がまぶしい『愛の渦』。
朝井リョウのベストセラーを映画化した『何者』。
あたりは映画ファンでなくても知られていそうかな、と。
ポツドールでの三浦さんの芝居も観たことがあります。元々激しい描写が話題の人な印象ですけど、それに比べると、映像はいくら役者が身体張ってるとはいえ、色々マイルドで、もっと「舞台の方が」過激で生々しかったんですよね。観た後じぶんの価値観と感情が揺さぶられる、というか。
こんな芝居みちゃっていいのか…?!みたいな罪悪感と気恥ずかしさもある。
でも今時、いわゆる「濡れ場」や「下ネタ」を、積極的に表現のもろもろをかいくぐり極限まで描写しつくす作家がどこにおりますか、それを役者にやらせる演出家がどこにおりますか、と思うのです。
直近の舞台化もされている『娼年』は、それなりの広さでやるにはえぐすぎた内容でしたし、松坂桃李の仕事選んでない必死さが、頑張ってね…!という感じでしたが(三浦さんの芝居は大きすぎないキャパでこそ輝く)、『恋の渦』『愛の渦』は映画好きならちょっと見てみては、とオススメしたくなる一作ですね。『恋の渦』はエンタメ色も強いですね~!より万人向き。
『愛の渦』も、わざわざ映画館で見るのはちょっと二の足を踏みましたが、一体何のジャンルの映画と勘違いしたのかな…?っていう客層がちらほらいて、それはそれで面白かったです。
舞台やっていた劇作家や演出家の仕事の比重が、映像に向かうのは、演劇ファンとしてはなかなか複雑なんですが、三浦さんのように才能豊かな人は周りもほっておかないと思いますので、そこは仕方ないかな。でも前のようにまたいつか小劇場クラスの芝居小屋に戻ってきて作品やって、ともひそかに思うじぶんがいます。
とりとめのない記事でしたが、そんな感じで。
この映画を楽しむコツは何と言いても「バイブス」です。誰かのお気に召しますように。ではでは。
ナギナリコ