ENTREVUE BLOG

「ナギ」ですが時にはあらぶり「エンタメ」「すきなこと」について書く。演劇・宝塚・映画・本、アート・旅行等娯楽、趣味の話とたまにの真面目コラム。

実話を元にしたブラックコメディの裏を読む@『スターリンの葬送狂騒曲』

こんにちは。最近気付いたのですが、何故か?このブログ、

www.hotchillireviews.net

というサイトの映画レビュアーランキングトップ300位に選ばれているようです。個人の方が運営しているサイトで、わたしのような辺境ブログをなぜ入れてくれたのか不明ですが…ブログ村からかな?

ご存知の通りこのブログ、半分以上は「ヅカネタ」「舞台感想」で運営しておりまして、映画ネタは週に一本あればいい方(まだ十数本くらい)なんですよね。映画も好きですし映画ファンのサイトに載せてもらえること自体は嬉しいことですので、これからもせめて週1位は映画ブログをアップしていこうと思います。

さて、映画ファンならなかなか興味惹かれる題材を扱った「スターリンの葬送狂騒曲」を観てました。スターリンの死を前にした、側近達の右往左往をコミカル、かつシニカルに描いた意欲作です。

 

あらすじ

“敵”の名簿を愉しげにチェックするスターリン。名前の載った者は、問答無用で“粛清”される恐怖のリストだ。時は1953年、モスクワ。スターリンと彼の秘密警察がこの国を20年にわたって支配していた。
下品なジョークを飛ばし合いながら、スターリンは側近たちと夕食のテーブルを囲む。道化役の中央委員会第一書記のフルシチョフスティーヴ・ブシェミ)の小話に大笑いする秘密警察警備隊長のベリヤ(サイモン・ラッセル・ビール)。スターリンの腹心のマレンコフ(ジェフリー・タンバー)は空気が読めないタイプで、すぐに場をシラケさせてしまう。 明け方近くまで続いた宴をお開きにし、自室でクラシックをかけるスターリン。無理を言って録音させたレコードに、ピアニストのマリヤ(オルガ・キュリレンコ)からの「その死を祈り、神の赦しを願う、暴君よ」と書かれた手紙が入っていた。それを読んでも余裕で笑っていたスターリンは次の瞬間、顔をゆがめて倒れ込む。
お茶を運んできたメイドが、意識不明のスターリンを発見し、すぐに側近たちが呼ばれる。驚きながらも「代理は私が務める」と、すかさず宣言するマレンコフ。側近たちで医者を呼ぼうと協議するが、有能な者はすべてスターリンの毒殺を企てた罪で獄中か、死刑に処されていた。仕方なく集めたヤブ医者たちが、駆け付けたスターリンの娘スヴェトラーナ(アンドレア・ライズブロー)に、スターリン脳出血で回復は難しいと診断を下す。その後、スターリンはほんの数分間だけ意識を取り戻すが、後継者を指名することなく、間もなく息を引き取る。この混乱に乗じて、側近たちは最高権力の座を狙い、互いを出し抜く卑劣な駆け引きを始める。表向きは厳粛な国葬の準備を進めながら、マレンコフ、フルシチョフ、ベリヤに加え、各大臣、ソビエト軍の最高司令官ジューコフまでもが参戦。進行する陰謀と罠――果たして、絶対権力のイスに座るのは誰?!
【公式】『スターリンの葬送狂騒曲』8.3公開/6秒動画

【映画パンフレット】 スターリンの葬送狂騒曲 アーマンド・イアヌッチ 監督 スティーブ・ブシェーミ, サイモン・ラッセル・ビール, ジェフリー・タンバー,

映画『スターリンの葬送狂騒曲』公式サイト

 

共産主義のイメージを逆手に取った「笑い」

スターリン、もとい共産党統治下のソ連についてポジティブなイメージを持っている方っていますか?まあ、いませんよね…逆らうものすべて粛清だの、国民を飢えさせ経済発展を滞らせただの…物騒で凄惨な話ばかりで、現代に至るまでの「赤」、「共産主義」に対するネガティヴイメージは元はソ連と中国の共産主義の敗北に起因すると言っていい。

それがこの映画はブラックジョークを多用し、スターリン自身を遠慮なく「おもちゃ」にし、笑いを誘う場面で構成しているのです。そりゃ、ロシア本国では上映出来ないよな、という内容。

観客は罪なき人がどんどん連行され、あっという間に、(時に何とリズミカルに!)人が死んでいくのを見ながら、一方でスターリンに恐れおののく人びとの滑稽さ、側近達の慌てふためく様子に非常におかしみを覚えます。

役者陣には、なにこのおっちゃん達カワイイ…!と、ときめきさえ感じてしまう出来。いや、まじでカワイイのです、あたふたするおっちゃん達が。

スターリンの娘スヴェトラーナに取り入ろうと我先に走り寄る様や、いざスタリーンが死んだ?!となった時の慌てふためきよう。スターリンを医者に診せなければ、でも優秀な医者は全員殺してしまった…という共産主義あるあるブラックジョーク、なんて冴えてるんでしょう。不謹慎だけどユーモラス。

本当にあの共産主義国家を舞台にした映画…?!という位、結構な凄惨場面を前にしても劇場にこだまする笑い声。かくいう私もくすくす笑ってしまいました。主要な登場人物たちの初登場場面に大げさな劇伴や演出を入れてるのも(特にソビエト軍最高軍事司令官ジューコフ)ヒーローものか!って感じですごくとっつき易いし、カッコイイ。俳優たちも(おっちゃんばっかりですが)皆達者で非常に会話のテンポもいい。キャスティングもハマってましたね。スターリンのおバカ息子ワシーリー(ルパート・フレンド)なんて個人的に超ツボに入ったキャスティングでしたし、フルシチョフ(サイモン・ラッセル・ビール )なんかもああ…ぴったりだな…と。シェイクスピア俳優で名高い役者さんがベリヤを演じていたのも印象的でした。

もうほぼコメディ映画ですが、この「狂騒から生まれてくる笑い」というのが後ほど効いてきます。

 

「笑い」と表裏一体、人間の残虐性を知る

雲行きが変わってくるのがスターリンの葬儀と後継者争いの話が進展し始めてから。マレンコフが(一応)後継者となり、スターリンの葬儀が国を挙げて行われるわけですが、モスクワに大挙した民衆に発砲騒ぎ、多数の死者が出る…と同時に、裏ではベリヤ暗殺をフルシチョフらが企てる。フルシチョフのさり気ないけど、なんやかんやで上手く立ち回り、権力を獲得していく様といったら!ただの「スーツの下にパジャマ着て出掛けちゃう愛妻家のおっちゃん」ではありません。一見「食わせ物」と見せかけ、でも実は運よくのし上がっていくしたたかさ、ってなんだかすごくフルシチョフっぽい…!と思いました。

ベリヤの死、あたりはもうクライマックスですが、非常に毒々しく皮肉が効いています。ベリヤは実際にもこの映画でも非常に存在感ある人物。あれだけカジュアルに「人の死」に笑った観客が、ベリヤの死に際しては全く笑えない。なぜかというと、彼の死だけは、殺されるまでの過程が「しっかり」「生生しく」描かれているから。頭に発砲され、リアルな赤い血が流れ、最後は石油をかけて燃やされる、という非道さ。あんなにキュートだったおじさん達はどこにいったの、という残忍ぶりです。

また、冒頭のある家庭のエピソード、息子の通報で父親が連行されてしまう、でもクライマックス間際、スターリンの死後、父親が戻ってくるというというエピソード、短いけれど非常に示唆的です。父親の底知れぬ瞳の奥の色と、息子の呆然とした瞳が忘れられません。この時代、恐ろしいけれどこういう事例はありふれていたのでしょうね。

また、白眉はこの映画のクライマックスとエンドロール。この映画、ある演奏会から始まり、最後も演奏会で終わるのですが、フルシチョフのあとのブレジネフ、という存在をさり気なく予感させる終幕。スターリンの死、だけでは終わらないソ連共産党の複雑な歴史を思わせます。エンドロールではこの映画の登場人物たちやソ連の民衆達の実際の写真が映し出されていくのですが、その顔に次々と「バツ」印、と非常にシニカル。

ここに至って、この映画を「笑う自分」と「己の残虐性」を意識せざるを得ないんですよね。旧ソ連にまつわるあれこれ、というのは誰もがみんな知っている。「でも」どこか他人事として、昔話として思っていないですか…?という。日常で「ふつう」に人が死ぬ、殺される。一体何人が殺されたのか。そんな恐ろしい出来事をカジュアルに笑える世の中なんですよ、今は。

数々の笑いを誘う場面で観客が爆笑の渦に巻き込まれていく様はまさに「狂騒」。しかし後半になるにつれて客席の笑がどんどん凍り付いていく様が印象的でした。「笑い」とは「客観視」「他人事に」しているから生まれるもの、バカバカしく滑稽に写るからこそ、ですよね。この映画、数々の実話を元にしていて、現代人からすると、え、本当に?!みたいな出来事も多数。でも確かに「おなじ」人間が行ってきた歴史的事実。実話をもとにしているんですよね……はからずも現代社会の世相をどこか意識させるエンディング、寒気がします。ある意味、「納涼映画」ですね。

 

おわりに、日本語版タイトルについて

日本語版『スターリンの葬送狂騒曲』というタイトル、音楽の使い方が印象的なこの演目にはとても合っていてセンスがいい。原題の『The Death of Stalin』からとても良い改変でした。(何せ日本に持ってくるとダサタイトル現象多いですよね…)

上映館徐々に減っていますので、興味のある方、是非ご覧ください!問題作、かつ意欲作です。映画好き、歴史好き、お芝居好き…の中でもコアな趣味の方に特におすすめです。

劇場情報|映画『スターリンの葬送狂騒曲』公式サイト

ではナギナリコがお届けしました!

 

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我々は、あの家族に何を思うか@是枝裕和監督『万引き家族』

カンヌ映画祭パルムドール賞を受賞した是枝裕和監督の『万引き家族』を観てきました。今回はこの内容についてレビューしたいと思います。

 


【映画 予告編】 万引き家族(ショート予告)

万引き家族【映画小説化作品】

是枝裕和監督 最新作『万引き家族』公式サイト

 

ストーリーとこの作品のテーマ

始まりは商店街のスーパーでの万引きシーンから。祥太(城桧吏)と父親(?)の治(リーリー・フランキー)が手慣れた様子で万引きをし、家に帰る途中でアパートの戸外にいる女の子を見つけ連れて帰ります。

家に帰ると母親役信代(安藤サクラ)、 亜紀(松岡茉優)、おばあちゃん役初枝(樹木希林)。彼らは都心の住宅街の一角の小さな一軒家で他人同士で暮らしています。

 

2時間程の上映時間中、1時間15分過ぎ位まで、「貧しく万引きをしながら暮らしている擬似家族である」こと「以外」はほぼホームドラマを見ているよう。いわゆる「お育ちが良くなく」、家族の会話も絶妙に下品な部分があるのですが、それもなんだか親しみを持って受け止められる。連れて帰った女の子、ゆり(佐々木みゆ)を「りん」と名付け、「家族」として可愛がる様子がストーリーの中心。髪を切ってやり、歯が抜けたら祥太と屋根上に投げてみたり、「家族」で軒先でスイカを食べ、見えない花火を楽しむ。新しい(盗んだ)水着を着せ、夏は家族で海に行く───ここまでで1時間以上かけて見せます。時折差し込まれるスーパーや駄菓子店等での万引きシーンもそこまで強い違和感なく日常に溶け込んでいる。個人エピソードとしては樹木希林演じる「おばあちゃん」が、亡くなった夫(と浮気から再婚した妻)の家庭(実はアキの実家)にさり気なく金の無心をしたり、アキが勤めている風俗店での話等が入ります。

ここから具体的にストーリーネタバレ。

 

大きく話が動き出すのは、海に行った後樹木希林演じるおばあちゃんが死んでから。

おばあちゃんを家族で掘って埋め、(駄菓子屋の主人が亡くなり)、祥太と(ついて行ったりん)の万引きが失敗する。祥太がりんをかばい、捕まる過程で怪我をする。怪我の治療のための入院手続きから、万引き家族」が綻び始め、一気に崩壊する。

祥太を置いて、夜逃げする家族たちあたりから、明らかにカメラの撮り方が変わります。「警察側の視点」であり「万引き家族への世間のまなざし」とも言える。そこに是枝監督の社会風刺的な主張が入ります、我々は彼らをどう裁くのか、正しさで裁けるのか──と言う。

家族観、家族の絆そのものへの問いは、是枝監督がずっと取り上げてきた内容であると言えます。

 

万引き家族と社会からあぶれた人々

カンヌで話題になった時、ネット上では「万引き」という犯罪を扱ってるだけで拒否感を受ける層がいる、みたいな話題があったとかないとか…。

この作品内で「万引き家族」のしていることは犯罪であり、それは終始変わりません。常習的に万引き(窃盗)をし、詐欺まがいなことも普通にやっている。「子ども」達は学校にも通わせず、親(がわりの二人)も学がなくて下品、パートと日雇いで稼ぎ、初枝さんの家と年金にたかっている、と絵に描いたような、ある意味ステレオタイプな「貧しい」家族なわけです。

しかし、彼らはある意味「愚か」で犯罪者ではあるのだけれど、果たして我々と断絶されるような存在なのだろうか、と思うのです。

「自分の子ども」を愛して、「家族」共同体を愛おしみ大切に思っている。さりげなく差し込まれる亜紀の元の家族たちは、お金に不自由せず、綺麗な一軒家に住み、素敵な家族3人で円満に暮らしている。その「無害な」「理想的家族」の気持ち悪さ、みたいなものも、この映画では描かれている。「理想的化されたもの」の歪み、闇が亜紀であり、おばあちゃんの存在なんですね。また亜紀が親しくなるお客「4番さん」(こういう役でお馴染みの池松壮亮)も、そういった理想化されたもの、社会からはみ出してしまった人、とも言えると思います。

「綺麗なもの」「理想的なもの」以外漂白されなかったことにされる社会は、なんて不自然で不気味な社会なんでしょうか。わたしはそこを描く是枝監督のスタンスは素晴らしいと思うのです。

 

子どもが家族にもたらしたもの

ストーリーの中心は「りん」にまつわるエピソードですが、「祥太」の存在がこの映画は巧みでした。祥太はちょっとした言動に賢さが伺え、顔つきもしっかりした子。「スイミー」はおそらく一年生位の教材ですけれど、翔太自身は本来、五、六年生位。「父親」治との関係は、仲の良さを感じさせ、親しみ湧くものでした。一方で、翔太は「父親(家族)が犯罪を犯し稼いでいる」ことに徐々に懐疑的になっていく。おばあちゃんを埋めるシーン、車上荒らしの場面は父親の「かっこ悪さ」が祥太の目を通して伝わる撮り方になっていました。そして祥太は次の万引きでついに捕まってしまう。祥太の内なる静かな変化が、万引き家族に大きな変化をもたらす。「子どもの成長」が「家族」共同体を様変わりさせる。「りん」の存在は家族に新たな共同体感覚をもたらすものでしたが、「祥太」の存在が家族を内から壊すものだった、というのはやるせないですね…薄氷の上の共同体であった、という。

 

キャストについて

まず、先述の子役、城桧吏くんと佐々木みゆちゃん。自然かつ役柄にもあっていてとても良かった。巧みな子役芝居、というよりはもっとずっとナチュラルで、でもだからこそ心に染みる。リリー・フランキーさんはご本人はいつも飄々としつつもダンディなおじ様感ありますが、まあ今回は役自体下品でしたね~。 でももう「父・治」として祥太に再会することはないのかな…とクライマックスを見るとまたそれは哀しくあるわけです。

そして信代役、安藤サクラさんのお芝居が素晴らしい。自然かつ、子ども達への愛に溢れた女性。折しも出産後、復帰第1作だったそうですが、「血が繋がらない母親」信代のあり方こそ、この作品のテーマと繋がる。警察の尋問シーン、尋問側の視点でずっと彼女をバストアップにしてるんですが、あのシーンの内なる苛烈さは凄まじいですね。池脇千鶴という穏やかな声色を持つ女優さんを使っているのが、また…。警察官の池脇千鶴さんとくん高良健吾君はなかなか贅沢なキャスティング。

樹木希林さんや柄本明さんはさすがの芝居で。

おばあちゃんの大らかで実は傑物、という存在感もこの映画のポイントでした。疑似家族共同体を包み込む存在。

 

終わりに

「彼ら」を「ダメか良い」「正義の尺度」でスパン、と片付けてしまうことが出来ないのが、この作品の奥深さだと思います。

言ってみれば万引きは悪いし、人のうちの子を誘拐して自分の子に、も駄目じゃないですか。性風俗でバイトしてるのも良くはないじゃないですか。お金無心に行くのも。

いくら子どもを可愛がっていても、(親がその意義をわかっていないため)学問の大切さを教えられないし、着るものや食べ物に困らない生活を与えることも出来ない。駄目と言えば駄目で、「子どもが幸せだからいい」「血縁じゃない絆がある」って落ちない作品でめある。

ただ、こういう家庭、それぞれ色んな事情で生きてるひとりひとりを、「これがベスト」「これが幸せ」な杓子定規で測れないですよね。

血のつながった親元に戻せばいいのか?決して良くないよね、という。

そういう意味で非常に重層的で繊細な作品でした。

モヤモヤしつつ、「我々」はその靄を受け止めて生きていかなければならないのかな、と。彼らの共同体とこの社会は確かに繋がっているのですから。「他人事じゃないんだよ」と思うのです…

 

…最後までモヤモヤしてますが今回はこのあたりで。ナギナリコがお届けしました。 

 

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テーマと演出だけではなく「ものがたり」を!@細田守監督『未来のミライ』

今回は映画の話題です。

夏休み映画として注目度の高い細田守監督の未来のミライを観てきました。

以下あらすじです。

 

とある都会の片隅の、小さな庭に小さな木の生えた小さな家。

ある日、甘えん坊の“くんちゃん”に、生まれたばかりの妹がやってきます。
両親の愛情を奪われ、初めての経験の連続に戸惑うばかり。
そんな時、“くんちゃん”はその庭で自分のことを「お兄ちゃん」と呼ぶ、
不思議な少女“ミライちゃん”と出会います。

“ミライちゃん”に導かれ、時をこえた家族の物語へと旅立つ“くんちゃん”。
それは、小さなお兄ちゃんの大きな冒険の始まりでした。

待ち受ける見たこともない世界。
むかし王子だったと名乗る謎の男。
幼い頃の母との不思議な体験。
父の面影を宿す青年との出会い。

そして、初めて知る「家族の愛」の形。

さまざまな冒険を経て、ささやかな成長を遂げていく“くんちゃん”。
果たして、“くんちゃん”が最後にたどり着いた場所とは? 
“ミライちゃん”がやってきた本当の理由とは―

それは過去から未来へつながる、家族と命の物語。

「未来のミライ」公式サイト


「未来のミライ」予告

未来のミライ (角川文庫)

この作品、鑑賞後、感想に困る一作でした。

何故か、と言うと「ストーリーがない」んですよね…この映画。

こう番宣見ると親子で楽しめそうなアニメっぽいじゃないですか。これまでの細田守作品位には冒険要素がある作品なのかな、と期待するじゃないですか。…うん、それは観ると割と打ち砕かれるんですよね。ということでどこがダメか?ということを中心に今回は語っていきたいと思います。※ネタバレあります

 

未来のミライのみどころ

…と言いつつ、まず、(絞り出した)いいところを!

  1. 演出、アニメ的な表現の素晴らしさ
  2. 映像美
  3. 個性的なキャラクター(もいる)

主人公のくんちゃん(幼児)の元に妹(のちの未来)がやって来ることから物語が始まる今回の作品。例えばくんちゃんが飼い犬ゆっこのしっぽを引っこ抜いて自分に差したら犬になってしまう…ガミガミお母さんが「鬼婆」(イラスト)になってしまう…等、アニメ的な表現は見応えがあったと思います。クライマックス間際の東京駅でのシーンも非常におどろおどろしく、けれど美しくもあって、見応えありますし(スチームパンクっぽい感じ)、この数々表現がこの作品の白眉、と言えるのではないでしょうか。

2.についても言わずもがなで、非常のどのシーンのアニメショーンも「綺麗」なんですよね。

3.キャラクターについても「ある程度」立っている。飼い犬のゆっこ、未来から来た未来ちゃん(はあんまり立っていませんでしたが…)、両親(特に母親の幼少期)、曾祖母、曽祖父(CV福山雅治)のエピソード等、それぞれの歴史、「背負うもの」が描かれているのは、総じて好印象でした。

 

ただし…致命的にスト―リーが…

問題は、これらの面白い表現、演出、キャラクター等、見どころがある中で、どうして、この作品が最終的に面白くない(言ってしまった…)のか?という話で、それはひとえに、「ストーリーがつまらない」「分かりにくい」部分からだと思うのですよね。

というか、ストーリーがあるようで「ない」なんだか「くんちゃんがずっと何かやってる話」というか、単調。何か事、ドラマが起こって、どうなった、ではなく、エピソードの羅列のよう。

乱暴に言ってしまえば、この話は「くんちゃん成長譚」で、幼子が自己と向き合い、社会性を身に付いていく話…とも言えると思います。…ただ、かなり苦しい。

割と最初の方で差し込まれる擬人化した(飼い犬)ゆっこの登場シーン、未来のミライちゃんの登場シーンといい、キャラクターは割と良いのに、それらを魅力的に見せるエピソード、仕掛けが、作品内であまり用意されていないんですよね。ぜんぶ唐突で有機的な繋がりが薄い。でも「ひなまつり」のシークエンスのような面白いのか面白くないのかよくわからないエピソードに割く時間がやたら長い…

クスノキを媒体にした「索引」の話も、スタンスとしては良いと思うのですが(過去作に似てはいますが)、どうも後付説明しましたー!!という印象がぬぐえない。くんちゃんのあれこれ、の印象が強すぎるのです。

この「索引」の話が具体的な構成、ストーリーから浮かび上がるものではなく、ミライちゃんによって「台詞として」差し込まれてしまっているのもよろしくない。

説明させたらあかんやろ!それを作品通じて観客に思い起こさせてこそ、物語やろ!っていう…

「ものがたり」がない、もしくはフォーマットが薄いのが難点だと思います。

 

日常性とファンタジー部分のかい離

階段状の不思議なデザイナーズハウスに中庭のクスノキ。それを「索引」として、色んなファンタジックな出来事が起こる。それが擬人化したゆっこや、未来のミライちゃんであり…なんですが、こう、そのどれも唐突で、どうもクライマックス近くまで「脈略がない」。仕掛けの仕組みがすんなり受け入れられない。

だから、観客はあれ?ゆっこ?イヌなのに?未来のミライちゃん?なんで?のように思いますし、日常性とファンタジックな描写がかい離して見えてしまうのです。

更に「日常」部分の描写に現実味がないのも、非常に気になりました…

そもそもくんちゃん、いくつ?2、3歳?にしてはしゃべりが達者すぎる(声優の声も浮いている)、あれ自転車乗れるの?(実は4歳)というのがあり、更に娘が乳飲み子を抱えて退院したばかりなのに母親がすぐ帰ってしまうのもあれれ?ですし、デザイナーズハウスは幼い子どもにはキケンがいっぱい。食べ物もフォトジェニックなパンケーキ(夜に)やケーキを家で食べていて、(実際作られているものではあるんですが…)

ゼリーのイエ (@gelatinedesign) | Twitter

なんだか「子育て」という超現実的な内容を扱っているのに、この作品には現実感がどこかない。

細田守作品あるあるかもですが、このくんちゃんの両親、一体二人でいくら稼いでいるんだ、みたいなツッコミも。「大きなところで嘘をついて、小さなところでは嘘つかない」のは、割と作品作りには欠かせない部分だと思います。そういうところに割と無頓着なのは、むしろ細田作品ならではの個性、なのでしょうか……過去作もそういう部分ありましたよね…

 

全体としては、このような印象でした。

ただただ出来事を並べられても、「ものがたり」にはならない訳でして。

演出や映像表現に「わーすごい!」と思っても、それだけで観客の満足度は得られない訳でして。

ここを見せたい!ここを描きたい!というような監督の情熱は感じます。

でもそれ「だけ」では2時間近くある作品として、もたない…

この作品、テーマはあると思います。ただ、「くんちゃんシークエンス」やら「ひなまつりシークエンス」やらが長過ぎたね…なんだか巨匠宮崎駿監督が途中でストーリーを放棄して場面作りに寄った作品作りをするようになったのと、似たような印象を受けました。

アニメーションですが、子どもにもあまりオススメは出来ないし、かといって大人もなあ…実際子どもいる人はどう思うのかなあ…という作品なので、細田守ファンとコアなアニメファン、映画ファンには辛うじてすすめられる、という感じでしょうか。

なんともモヤモヤしている感じですが、そんな作品です。

 

…少しすっきりしない内容ですが、今回はこれでおしまい。

以上ナギナリコがお届けしました。 

 

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DQNのバイブス感じる一作@脚本三浦大輔 監督大根仁『恋の渦』

今日は久しぶりに面白過ぎた映画のレビュー等を。

モテキ』『バクマン。』等で特にサブカル界隈から人気ある映画監督大根仁さんと演劇ユニットポツドール三浦大輔さんがタッグを組んだ一作、『恋の渦』

恋の渦

上映当時話題になっていたのは知っていたのですが、見逃していてこの度初見。最高に面白いかったし「これがDQNのバイブス…!!」と三浦さんの描写力にえらく感動しました。大根監督作品あまり外れないですね。どれもオモシロイ。以下あらすじです。

 

部屋コンに集まった男女9人。イケてないオサムに、カノジョを紹介するのが、今夜の隠れテーマだ。しかし、やってきたユウコのルックスに男は全員ドン引き。それでも無理矢理盛り上げようとするが、全てが空回りし、微妙な空気のままコンパは終わったはずだったが・・・。その夜を境に、男女9人の交錯する恋心と下心、本音と嘘が渦巻き、ゲスでエロくておかしな恋愛模様が繰り広げられていくのだった。

『恋の渦』公式サイト。「モテキ」の大根仁監督が三浦大輔(ポツドール)の原作を映画化!

内容的にはまああらすじ通りで、時間は経過しても終始室内(コウジとトモコの部屋、タカシとユウタの部屋、オサムの部屋)だけでの会話劇となっています。

では登場人物。

タカシ(26) 根ねがピュア、金髪 ユウタと地元からの付合い、カオリが気になる
ユウタ(27) 金髪  タカシを泊めている 実は…

コウジ(27)    金髪短めもじゃもじゃ、ナオキの兄、トモコと同棲中 実は…
ナオキ(23)  黒髪コウジの弟、

オサム(28)  メガネリーゼント

カオリ(26)  ボブヘア、ユウコの友達、ビッチ 実は…
サトミ(21)     女子大生 ナオキと付き合ってる 実は…

ユウコ(26)     篠田麻里子似疑惑、ブロックヘアーロング

トモコ(28)      コウジの彼女、同棲中 実は…

 

公式サイト見て頂くとわかるんですが、みんなごりごりのギャル、ギャル男で見た目を作ってて、とにかくインパクトがある。

 

DQNのバイブス映画

そしてそこで繰り広げられる会話、「バイブス」「鍋パ」「~じゃね?」等終始軽い…とにかく軽い…なんかこう、ふわふわ掴みどころのない、言いてみれば「知性が感じられない」「バカっぽい」「軽薄すぎる」会話をノリと勢いでやって、そこに友情、恋愛のゴタゴタが絡んでくる感じなんですよね。

ギャルとギャル男とすでにお付き合いはあまりないのですが、あ~~ギャルとギャル男ってこういう感じよね、みたいなテンポ感の良さが輝いてる作品。

見始めて最初こそ、ギャル、ギャル男達に戸惑いしか覚えず、人間関係のゴタゴタ話が出てくる度、そ、そこ大事なとこ…?拘るとこ??(苦笑)…という感じでしたが、だんだんそれぞれの人間関係の「秘密」も明らかになってきて、どんでん返し要素もあり、おおっ、オモシロイ…!!と。「ただの日常」なんですが、「ちゃんと」エンタメですね。

 

共感できない人間に共感する楽しさ

そしてじぶんとは普段縁遠い、ギャル、ギャル男の話なんですけど、

「こういう人間いるよね…」

「こういう女(男)いるよね…」

「こういうタイプとは付き合いたくないよね…」

「これ、こういう展開になるんじゃ…?」

のように人間関係に対する共感と、自分の環境に当てはめ、あれこれ考えたり、結末・展開予想するのだってタノシくなっちゃうんですよ。

なんだかんだで2時間飽きずに見ちゃたな、という楽しい映画でした。

ゲスいですけれどね。

結末はちょっと予想できたかな、順番に当てはめていくとそうだろうな~と。

 

キャラクターについて

公式サイトよろしく、見た目からして相当尖っているキャラばかりなんですが、個人的主観で嫌いキャラを述べさせていただくと、男性は圧倒的にオサムがダメでした。女性はやっぱりカオリかなあ。

※以下キャラやその後の展開についてネタバレ(ちょっと下品)

 

オサムのユウコに対する態度、ユウコに対する周りの態度、男性陣やカオリが最強に嫌でして。ユウコと関係を持っておきながら、ユウコと友だちでいながら、一方は周りにユウコがけなされているから、自尊心が満たされず、ユウコと付き合っていることを隠し、一方は友だち付き合いしながら陰でバカにしている。その「人間的にちっちゃい感」がダメ…。カオリはうん、こういう子はいますよね…的な、「絶妙なルックス」で「男女関係での立ち回りの仕方」「友人関係の立ち回りの仕方」があざとい。こういう超「したたかタイプ」はやっぱり苦手に思っちゃう…トモコも苦手と言えば苦手ですが、うーん、役者がこれまた絶妙に「うざい」「めんどくさい」ギャルを演じきっていて、そこに関心してしまい、そこまで思わなかったかな。ユウコのルックスはそんなダメなのかなあ…と思っちゃった。ちょっと下品でつつしみない感じはあるけど、明るいしスタイル良いし一途だし良い子じゃん、って。本命彼女キープしながら、将来についてはしたたかでいて、上手く立ち回ってるコウジも嫌です。でもやっぱりナオキが最高に嫌だった。タカシとユウタの友情に少しホロリとしてしまったり、でもタカシはいいやつでこの中ではいちばんマトモそうだけど、絶対モテないだろうな…と思ったり。

周りにもうギャルやギャル男なんて絶滅危惧種のはずなのに、こんないちいち「いるいる~」感を会話で作れる三浦さんは凄いな、と。

役者も。本来は別にギャルやギャル男ではないだろうし、すごいな。

 

これまでの三浦大輔作品

ポツドールの三浦さん、現在は舞台より映像での仕事に力入れておられまして、

役者のこれまた身体はった演技がまぶしい『愛の渦』。

愛の渦

朝井リョウのベストセラーを映画化した『何者』。

何者

あたりは映画ファンでなくても知られていそうかな、と。

ポツドールでの三浦さんの芝居も観たことがあります。元々激しい描写が話題の人な印象ですけど、それに比べると、映像はいくら役者が身体張ってるとはいえ、色々マイルドで、もっと「舞台の方が」過激で生々しかったんですよね。観た後じぶんの価値観と感情が揺さぶられる、というか。

こんな芝居みちゃっていいのか…?!みたいな罪悪感と気恥ずかしさもある。

でも今時、いわゆる「濡れ場」や「下ネタ」を、積極的に表現のもろもろをかいくぐり極限まで描写しつくす作家がどこにおりますか、それを役者にやらせる演出家がどこにおりますか、と思うのです。

直近の舞台化もされている『娼年』は、それなりの広さでやるにはえぐすぎた内容でしたし、松坂桃李の仕事選んでない必死さが、頑張ってね…!という感じでしたが(三浦さんの芝居は大きすぎないキャパでこそ輝く)、『恋の渦』『愛の渦』は映画好きならちょっと見てみては、とオススメしたくなる一作ですね。『恋の渦』はエンタメ色も強いですね~!より万人向き。

『愛の渦』も、わざわざ映画館で見るのはちょっと二の足を踏みましたが、一体何のジャンルの映画と勘違いしたのかな…?っていう客層がちらほらいて、それはそれで面白かったです。

 

舞台やっていた劇作家や演出家の仕事の比重が、映像に向かうのは、演劇ファンとしてはなかなか複雑なんですが、三浦さんのように才能豊かな人は周りもほっておかないと思いますので、そこは仕方ないかな。でも前のようにまたいつか小劇場クラスの芝居小屋に戻ってきて作品やって、ともひそかに思うじぶんがいます。

とりとめのない記事でしたが、そんな感じで。

この映画を楽しむコツは何と言いても「バイブス」です。誰かのお気に召しますように。ではでは。

ナギナリコ

 

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#夏に見たい映画 は長編アニメ映画である。

こんにちは、久しぶりに映画の話題を。

ちまちまはてぶの隙間に更新している、noteの企画 #夏に見たい映画 タグの投稿を募集中です。

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今回はその記事をこちらにもアップ!!

結論から言うと

夏=夏休み!!夏休みと言えば!!長編アニメ映画!!!ですよー!!!!

ホラーとか娯楽大作とかもあるけど、やっぱ夏はアニメ!!

大人でもアニメは大好きです!!

完全なる個人的な趣味に走って長編アニメ映画をご紹介します!

 

 

ドラえもん大長編シリーズ

子どもも昔子どもだった大人も大好きドラえもん!!

中でもわたしが好きな作品は…

のび太と鉄人兵団

映画ドラえもん のび太と鉄人兵団

ドラえもん劇場版シリーズでは人気作だと思います。ロボット惑星メカトピアの鉄人兵団が地球人総奴隷化作戦を画策…というストーリーとしてはダークで大人っぽい雰囲気もある。シリアスなテーマを扱っている部分もあって、大人でもクライマックスは感動してしまうかも…小さい頃からビデオテープが擦り切れるまで観た大好きな作品。映画版ヒロイン、とも言える少女ロボット・リルルの美しい生き様を見てみて!と言うイチオシ作品。

映画ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団

人気作なので近年リメイクもされています。タイトルは『新・のび太と鉄人兵団 はばたけ天使たち』。劇中で出てくる「ザンダクロス」というロボットの「脳」の部分が「ピッピ」というひよこキャラになったのでよりキャッチーな感じ。今のお子様には断然こっちの方が見易いかと。こちらのドラえもんはもちろん、大山のぶ代さんではなく、現在の水田わさびさんが声優です。

 

のび太と雲の王国』

映画ドラえもん のび太と雲の王国

夏にぴったりな「雲の王国」もイチオシです!こちらは旧作のみ。Amazonでも観れます~!「雲かためガス」で空にドラえもんのび太達が王国を創る…と言うストーリーなんですが、そのシーンに本当わくわくがいっぱい。ストーリー上は分かり易い悪役キャラもいながら、最終的なテーマはとても壮大です。「ノアの方舟」のエピソードを取り入れ、地球の環境問題をピックする、藤子・F・不二雄先生の今日的な問題への造詣の深さね…コミックスを読んでいると、ちょっとしたゲストキャラも出てきて、そこも(おたく的)見どころです。

 

『ドラミちゃんアララ♡少年山賊団!』

映画のび太の結婚前夜/ザ☆ドラえもんズ おかしな お菓子な オカシナナ?/ドラミちゃんアララ少年山賊団!【映画ドラえもん30周年記念・期間限定生産商品】 [DVD]

この作品は現在ほぼ映像ディスクでしか観れない、ということで完全なるファン向け、でも紹介しちゃう笑。ドラえもんの劇場版シリーズは知っていても、この作品を知っていて、好きな人はなかなかのマニアかと思います!(わたしは大好き)ドラミちゃんが主演のアララ♡少年山賊団と、ザ・ドラえもんズ おかしなお菓子なオカシナナ?、のび太結婚前夜という三本立ての一作。この作品を紹介したのは、わたしが大好きな原恵一監督作品だから。クレヨンしんちゃんの「オトナ帝国の逆襲」、「アッパレ戦国大合戦」、森絵都原作『カラフル』の監督です。

原恵一 - Wikipedia

元々「原恵一」監督を知る前、子どもの頃から大好きだったんですけどね。短編なのですが、「燃え」が詰まっている…!こども賊の秘密基地のシーン、野菜の収穫シーン、ドラえもんの道具の使い方、全てが楽しくワクワク!!むかしファンの方とのびすけの「椅子、テーブル!」の言い方で(SNSで)死ぬほどウケたという、個人的にも色々思い出深い作品…笑

原恵一監督のファンが運営してくれているTwitterもご紹介↓

 

クレヨンしんちゃん劇場版シリーズ

定番のアニメ映画の長編ものとして、やっぱりこれははずせないなあ、というクレヨンしんちゃん

『嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』

映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ! オトナ帝国の逆襲

クレヨンしんちゃん劇場版シリーズでも革命的な一作。春日部市で行われた20世紀博に訪れた野原一家。20世紀博は大人気で、大人たちは20世紀のノスタルジーに浸り、やがて春日部市では懐古趣味的な文化が流行っていく。ある夜、「20世紀博から大切なお知らせ」がテレビで放送され…というストーリー。「大人でも楽しめるクレヨンしんちゃんとして、クレヨンしんちゃんの劇場版シリーズでは人気が高い作品です。テーマも深い。クレヨンしんちゃんは、元々原作まんがは青年誌で連載していて、ちょっとエッチで下品な要素もあるのですが、アニメも確かにそういう部分はあるんですが、劇場版は監督によって色んなテーマ、舞台を扱う。中には今日的なテーマを扱った作品もあります。原恵一監督は、従来の「おバカで下ネタ満載なしんちゃん」のキャラクター性も意識しているのですが、これまでの劇場版と趣が異なる大人受けするストーリーや画面作りをされた方です。

原恵一監督の劇場版最新作は杉浦日向子さん原作の百日紅。今後も劇場版新作タイトルの公開が予定されています。

百日紅?Miss HOKUSAI?(HDクオリティ)

 

『ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん』

映画クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん

子どもも大人も楽しめる感動的なストーリー。クレヨンしんちゃん劇場版シリーズでは初めて野原ひろしをピックアップ。ある日野原ひろしが謎の組織「父ゆれ同盟」によってロボットに変えられてしまう、ロボとーちゃんは大活躍!しかし「父ゆれ同盟」の陰謀は日本の父親の復権をめざし父親革命を起こす事だった…。大人帝国ファンだとなかなか「上手く使ったね~!」みたいな演出が輝る、ちょっとフクザツな心境の作品。でも本当手堅くよく出来ている作品です、イチオシ!

 

『オラの引っ越し物語 サボテン大襲撃』

映画クレヨンしんちゃん オラの引越し物語?サボテン大襲撃?

夏にぴったりなエンタメ色の強い作品と言えばこちら。往年の特撮映画、パニック映画っぽい…!!ストーリーはひろしがメキシコに赴任することになって、野原一家がメキシコにお引越し!…そこで「キラーサボテン」に襲われ…という本当これがすべての、シンプルなストーリー。だけど面白い!よくわからないけど単純に楽しい!これぞエンタメ!って感じの作品です。

 

ジブリ映画

やっぱり日本のアニメ映画、と言えばジブリは外せないよね~!ということでここは忘れずご紹介します!

思い出のマーニー

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映画『思い出のマーニー』公式サイト

夏に最適な爽やかな背景が印象的な思い出のマーニー米林監督の作品、ジブリ映画の中では一般的にはそこまで評価は高くない、と思います。宮崎吾郎監督よりは…みたいな感じでしょうか。わたしは『マーニー』も『アリエッティ』もとてもすき。(ただメアリは…という感じ)作品として、ドラマティックさや、ワクワクする場面があるような作品ではなく、ぶっちゃけ地味と言えば地味です。シリアス。でも、わたしが米林監督作品が好きなのは、描かれる女の子たちがなんというか、自然で、監督自身の女の子たちに対する優しい目線から描かれているところなんですよね。杏奈というヒロイン然としていない、コンプレックスを持ったキャラクターに対する描写が優しい。決して子ども向けではないでしょうが、大人が見るとしみじみと素敵な映画だな、と。

 

魔女の宅急便

魔女の宅急便 [DVD]

今更紹介するわけでもない名作ですが、おりしも最近ミュージカル化された舞台を観て、改めて宮崎駿監督のジブリ映画の秀逸さに気付かされた作品。

キキの旅立ちで荒井由美さん(当時)のルージュの伝言(今見たら色んな方がカバーしてるんですね~)から始まり、名曲『海の見える街』等、音楽がおしゃれで良い!キキの飛行シーンの爽快感も最高!

ルージュの伝言

ルージュの伝言

  • provided courtesy of iTunes

かつ、魔女であり一人の独立した女の子として、キキというキャラクターが魅力的なんですよね。内面の葛藤も含めて。小さい頃はキキがどうして魔法が使えなくなるのかわからなかったけれど、歳を経て見ると色んなシーンにこういう意味が、こんな魅力が…というのが感じられる趣深い作品。トンボとか小さい頃はキライでしたけど笑、今見るとそれはそれでチャーミングなキャラクター。

 

戦争映画

自分は「過去に戦争を経験した」「世界で唯一の被爆国である」日本という国の日本人であるということ、毎夏にはどうしても意識せざるを得ないですね。

映画でも「戦争もの」ってアニメ映画含め色々作られていますが、中でも改めて紹介したいこのが二作品。

火垂るの墓

火垂るの墓 [DVD]

高畑勲監督の名作、火垂るの墓。毎年のように夏放送され、何度も何十回も観た方も多いのでは。戦闘機の緻密な描写、静太と節子、たったふたりの兄弟の心に残るやり取り、そもそも「主人公が死んだ」ことから始まる構成も秀逸。高畑勲監督のこだわりが随所に感じられる。何度も何度も改めて観たくなる作品。映画、ドラマ等、沢山の翻案作品も作られました。

 

この世界の片隅に

この世界の片隅に

ロングラン上映中! 劇場用長編アニメ「この世界の片隅に」公式サイト

片渕須直監督作品、すんごい遅れて割と最近観ました…名作!

現在もロングラン中で各地の映画館で公開されています。わたしは片渕監督のトークイベント付き上映会で鑑賞しました!

これまでの戦争映画、作品は良くも悪くも「戦争の悲惨さ」が表に立った作品が多かったように思います。この作品は、主人公のすずさんのお嫁入りから話が動き出す。どこか浮遊感のある声をした、のんさん演じるすずさんというこれまた浮世離れしたキャラクター。そしてストーリーも戦争映画なんですが、リアルよりはファンタジックな描写が印象的。ただ、その日常の描き方がとても秀逸で、わたしにはとても「しっくり」来たんですよね。最近読んだ田中小実昌さんの短編集『ポロポロ』の描き方に通じるものがあります。

ポロポロ (河出文庫)

戦争は確かに現代のわれわれからするとドラマティックで歴史的な事件なのですが、一方で当時の人たちには「当たり前」の日常なんですよね。物資が行き届かないことも、空襲があることも、けがをしたり、病気になったりする人がいる日常。「兵隊さん」がいる日常。穏やかなすずさんのクライマックスの慟哭が印象的でした。

 

以上、夏に観たいアニメ映画をご紹介しました!

定番・名作ばかりですけれど、改めて観ても楽しめる作品です!是非是非ご参考までに。

ナギナリコがお届けしました~!

 

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