北翔海莉 縦横無尽の活躍、個性派俳優達との競演!@新橋演舞場 『蘭~緒方洪庵 浪華の事件帳~』
5月20日まで新橋演舞場にて公演中の『蘭 ~緒方洪庵 浪華の事件帳~』を観てきました!新橋演舞場お久しぶり!なナギナリコです。
「天下の台所」として栄える商人の街、大阪。緒方章━のちの名医・緒方洪庵━(藤山扇次郎)は蘭学校中天游(石倉三郎)が主宰する思々斎塾で医学研究の学才を伸ばしていた。章は人間は不器用だが天游から一目置かれており、ある用事を言いつけられる。それは幕府が刊行を禁止している「禁書」の入手だった。章は本屋の加島屋(りゅーとぴあピース)から目的の禁書を入手しようとするが、待ち合わせしていた天満宮で加島屋は殺されてしまう。騒ぎとなる中、章は謎の見目麗しい若侍に心を奪われる。その若侍は宮廷舞楽を担う「財天学所」の楽人・東儀左近(北翔海莉)で、女であることを思々斎塾の手伝いトラから知らされる。しかもこの若侍・左近には大阪の町を守り千年の歴史を持つ闇の組織「在天別流」の総頭領の娘という別の顔があった━━━
松田健次 脚本
錦織一清 演出
岸田敏志 音楽
全体について
幕開け、宮廷舞楽を舞う左近のシーンから始まります。そして浪華で逞しく生きる登場人物、演者をそれぞれロック調にマイクパフォーマンスで紹介。舞台は変わって思々斎塾。緒方章(後の緒方洪庵、藤山扇次郎)は師匠に蘭学の禁書の受け取りを頼まれますが、受け取る相手の加島屋が茶屋で毒殺される、という事件が起こる。その嫌疑が中天游の息子、耕助と恋仲であり、茶屋に奉公しているおあき(宮嶋麻衣)に掛かってしまい、章はことの真相、事件解決に乗り出しそこに若侍左近も関わっていく…みたいな流れ。
事件の解決が話運びの中心で、蘭学を学ぶ主役の章は意外と「巻き込まれ型主人公」です。ヒーロー兼ヒロインのような部分は全て左近(北翔海莉)が担う。舞い歌い浪花講、殺陣もあり、竜笛(は実際吹いていたのかな?)のシーン等、見せ場がたくさん。宝塚時代のファンなら綺麗な「風の次郎吉」
といった印象で、かなり役としてオイシイキャラ。他も濃い登場人物が多く、中天游(石倉三郎)や妻お定(久本雅美)、実は…という秘密を持った瓦版三吉(佐藤永典)、本屋仲間郡司衆・山城屋忠兵衛(神保悟志)等が特に印象的。花道の使い方、選曲、アドリブや客席いじり、二階席客席降り等、基本的には時代劇ではありますが、現代的な演出が光ります。クスクス笑えて、華やかな場面、人情に訴える場面、と盛り沢山の喜劇でした。藤山寛美さんから続く例の「お約束」も見れました!
ただ、特に音楽の出来が、わたしにはあまり良くないように思えました。舞台音楽の基本的なお約束は「芝居の邪魔をしないこと」のはず。音入れのタイミングや選曲に難ありで、芝居の流れ、殺陣の流れを音楽が邪魔している。日本語歌詞の歌を使うのも、台詞と被っていて観客としては見辛い。選曲センス自体も疑問が残りました。
演者について
主演の藤山扇次郎さんはまだまだ若手ですが芸歴もきちんとある方。
藤山 扇治郎 | 俳優・役者 | 松竹新喜劇公式サイト | 松竹
ですが、主演者としてはまだまだ芸を磨いて欲しいな…というところ。意外とわかりやすい見せ場がない章役、時には押し出しよく、特に観客の心に訴える芝居を巧みに見せていかなければならない。
笑いも「アク」がないとダメ。
扇次郎さんのお母さんは藤山寛美さんの娘さんだそうですね。藤山直美さんの甥っ子。喜劇王・藤山寛美さん、直美さん、と続く藤山姓を名乗り、松竹期待の俳優さんですので、頑張って欲しいな。
北翔海莉さん(愛称:みっちゃん)は数々の見せ場と華やかな存在感ゆえほぼ主演、といった趣き。浪花講をはじめ男役、女役など様々な声色を巧みに使い分ける様が素晴らしいですね。花道で見得を切る場面で「北翔!」と大向こうが飛ぶのが演舞場っぽい…!
他には瓦屋三吉の佐藤さんがイケメンで客席あしらいも上手にこなし、目立ってましたね(ただ、本筋に関係ないとはいえ、役名表記やポスターでネタバレはどうなの…?)。
あとは…演者さん皆さん個性的なキャラクターど可笑しみのある芝居をされるので、楽しめました。が、芝居声が劇場のキャパに合わず小さい方が多く、そこだけ残念でした。
もっと声も芝居も前に出して〜演舞場って結構大っきな劇場ですよ?
音響も悪かったしな…一階後方で結構聞き取りづらいと二階、三階席は…ですよね。
終わりに
わたしは主演(前提は藤山→北翔のダブル主演といった風情ですが)の北翔海莉さんのファンですので、彼女の宝塚時代のキャリアが存分に生かされた縦横無尽の活躍を見れ、楽しかったです。宝塚卒業後のキャリア形成に不安を覚えたこともありますが、
これからも「エンターティナー」として
自由に華やかに、時にしたたかに色んな舞台で活躍して欲しいです!