ENTREVUE BLOG

「ナギ」ですが時にはあらぶり「エンタメ」「すきなこと」について書く。演劇・宝塚・映画・本、アート・旅行等娯楽、趣味の話とたまにの真面目コラム。

まだまだ発展途上な@ひつじ座 虚構の劇団『一人芝居&自主企画発表会2018』

久しぶりにちいさめの舞台、しかもセミプロ?アマ?と言えるのかな、を観てきました。デカイ箱の舞台ばかり観ていたので、なんだか新鮮。では本日もナギナリコが感想をお届けします。まずは公演のご挨拶文からご紹介。

 

そんなわけで、「一人芝居プロジェクト」です。
『虚構の劇団』のメンバーになるために、鴻上が必ず通るためのステップだと考えているものです。
現在のメンバーは、全員、一人芝居を発表しました。
これは、自分で脚本を考えて、自分で自分を演出して、
自分が責任を持って20分前後の話を観客の前で発表するものです。
この結果で、研修生が正式な劇団員になるかどうか決まります。
鴻上はアドバイザーという立場で、演出はしません。全部、自分で考えるのです。
このプロジェクトに、溝畑藍と金本大樹も挑戦することになりました。
それから、池之上真菜も本人と話し合ってもう一度挑戦することになりました。追試みたいなものです。
それから、これだけだと、全部で1時間ぐらいにしかならないので、お客様に劇場に来ていただくのは申し訳ないなあと思い、
いつものように、劇団の演出部から自主企画を募集することにしました。
ただ、バタバタしていて現時点では全体が確定していないので、決まり次第、「虚構の劇団」のホームページにアップします。
脚本も演出もスタッフワークも、すべて、役者たちがやります。
よろしければ、メンバー達の試行錯誤、トライアル、自主企画、見届けに来てやって下さい。
きっと楽しい、またはしっちゃかめっちゃな、
または可能性に溢れた、または残念な、またはよく分らない、または
とにかくいろんな意味でわくわくする機会になるはずです。よろしくお願いします。

鴻上尚史

 

虚構の劇団 | 虚構の劇団に関する情報です。

鴻上尚史さん主宰の「虚構の劇団」の研修生の一人芝居三本、自主企画一本で休憩込み1時間45分。全て20分位の作品。一人芝居は全て作・演出・出演を兼ねています。

一人芝居の方はみんな虚構の劇団研修生かつ、役者志望で、三人で自主企画をした方は演出家志望なのかな。こちらは虚構の劇作家、演出家の方が作ったということかもしれません。

以下、各公演について感想ですが、もう公演終わってますし、そもそもちっちゃい箱なんで、行った人もそんなにいないだろうし、辛口で行きます。

 

「マネキン2」作・演出・出演:池之上真菜

マネキンとしてアルバイトしている女性が、急遽、現場応援に行くことになる。しかし、女性はこの後予定がある。現場で余計な仕事が増えたり、人の責任をかぶったり、ちょっとした懐かしい再会をしたり…結局、自分の大事な予定に行くことが出来ないまま終わる。

まず、幕開け電話のベルで観客の注意を引けたのはいいな、と思いました。ヴィジュアルが良い、ってタイプの役者さん(女優)ではないんですが(失礼)、舞台姿に華があるし、口跡もいい。ただ、終始同じような発声、同じようなテンションで、最初は良かったんですが、途中から観てて疲れました。

ラストの長台詞がキモなんだから、それに合わせて全体をチューニングしなければならないのに、芝居が小屋の大きさにもあっていないし、緩急がない。

あと、本として一番気になったのは、「情報過多」。「疲れたな」「懐かしいな」みたいな感情って、あえてひとりごとで口に出さなくても芝居で見せれます。また、一人芝居の難しいとこって、要は自分が「攻め(発)」も、「受け」もやるところだと思いますが、彼女は攻めに比べ受けがとても弱い。本も、その部分が弱い。マネキンを実際したことがあるのかな?したことあるような、なさそうな印象も受けるので(ちなみに私はあります)、そこかな〜?リアルさがあるような、ないような感じ。とにかく全体としては勢い良すぎて疲れました。アマの学生の作品、という感じ。

 

「どんより団子」作・演出・出演:溝畑 藍

女友達と高校卒業前に山かな?公園みたいなところに授業サボってやってくる。なのに、女友達は彼氏と電話ばかりして気もそぞろ。もっと自分をかまって欲しいのに…みたいな感じです。

この方も芝居の緩急づくりが弱い。基本的なことは学ばれてるんでしょうが、「発」が強く、「受け」がやや弱く、小屋の大きさにあった芝居になっていない。話として、卒業を控えて「思春期の女友達への複雑な思い」みたいなものを描きたいのだと思いますし、実際伝わる部分もありますが、繊細さが足りない。団子屋のおばちゃんとのやり取りはまだ良いとして、シャボン玉通じて出会う親子とのエピはなんで入れたかよくわからなかった。あと、勘違いかもですが(名前を言っているのを聞いていたのか、子どもが名乗ったのかもしれませんが)、初対面の人に自分の子どもの名前をいきなり言う親はいません。聞く方は、小さければまず性別、年齢、打ち解けたら名前の順。私結構電車とかで子ども話しかけちゃうタイプなんですが、そこが気になりました。クライマックスは良いですね。ただ、やはりこの芝居もどこかチューニング不足なので、観客の空気を感じとって芝居を変えた方がいい。主人公がラスト涙してましたけど、見ててわたしはしらけました。一人で「頑張っちゃってる感」出してるって観客からしたらうざいじゃないですか。1作目よりはお芝居としてはちゃんとしていたと思いますが、それでもやはり拙い。多少笑をとってる場面もありましたが(わたしは全く笑えませんでしたが)やはり勢いが強すぎるし、やりたいことはわからない訳でもないが、拙い。そしてやっぱりみていて疲れる。

 

「ロックンロール イズ ノット デッド」作・演出・出演:金本大樹

ロッカーの青年が渋谷で路上シンガーをしているが、歩くのをやめて聞いてくれる人はほとんどいない。そんな時持っているギターをきっかけに、ある女性が声をかけてくる。何故か彼女にホテルに誘われ、童貞の彼は戸惑いながらもホテルに向かう。

ひとり芝居の中ではこの作品が一番「ちゃんと」していました。

「ちゃんとしている」とはどういうことか、というと、

・キャラクターがどういう人間かわかる

・どういう舞台でどういうストーリーかわかる

・落ちが一応ある

・客席や劇場に合わせた芝居が出来るか

です。あくまでもわたしの見方ですが。落ちは、勘のいい人なら、最初の方で落ちまで想像できると思います。が、ベタだけど良いです。わかりやすいし。金本さんは芝居も結構できて、やっている役が童貞のいわゆるコミュ障っぽい人間なんですが、「攻」も「受」「強弱」も出来ている。客席の呼吸も見ている。勢いがあり、展開も早いのですが、そんなこんなで退屈はしない、楽しめた一本でした。更にしいて言うなら…ラストのギター弾く場面の後、本当のラストの台詞、場面は必要か?と思いましたね。説明的、というか。話としては警察に連行されるで幕を閉じても良い位でしたけど、ロックンロール・イズ・ノット・デッドなので入れて良かったのかな。ただ最後の場面はやっぱり入れなくてもいいなあ、とちょっと思いました。でも全体的にはとても楽しめました。

 

 

「ハコニワ」

作・演出: 土屋克紀(虚構の劇団演出部)

出  演:梅津瑞樹、土屋克紀(虚構の劇団演出部)、橋本沙希(劇団まんぷくちゅうすう)

芝居としてはこれが圧倒的にしっかりしていましたまず本がキャッチー。漫画でも流行ってる、デスゲームもの、というか、「ゲームもの」ですよね。設定が、ある女性に告白される、という場面を延々と繰り返す男性と、ゲームマスター的な存在(実は妖怪)の話。役者への当て書きも出来ていて、少し膨よかなメガネの女性、イケメン系男性、キャラクターっぽい妖怪(男性)と、適材適所。役者も緩急ある芝居をしているし、客席の雰囲気や小屋にあった芝居しているので良かった。

何よりこの芝居が良かったのは「とても演劇的なところ」です。

演劇っていうのは、一人芝居というのは実は少なくて、だいたい何人か役者がいて、するもの。そしてそれには「対話」が必要。

わかりあえないことから──コミュニケーション能力とは何か (講談社現代新書)

演劇入門 (講談社現代新書)

以上の二冊あたり、そのあたりのことも書いてあるので、ご興味を持たれた方は是非。

前者は新書としても何か賞を受賞していたり、評価の高い本です。

 

会話ではなく、「対話」。よく、芝居の演技指導する映像とか現場で見ると「もっと相手の話をよく聞いて」「相手をよく見て」「呼吸を合わせて」みたいな指摘ってあります。

演劇というのは、なんだか個性的な人たち、エキセントリックなキャラクターのひとがやってる、みたいな印象があるかと思いますが、「コミュニケーション」「対話」が出来ないとまず、良い役者にはなれないはず。

で、公演の話に戻りますが、この作品はそのあたりがしっかりしていた、というか、テーマの一つ、という印象を受けました。「相手の出方」で自分が「どう受ける」か、「相手がこうして来たら」、「自分はどう対応を変えるか」。

主人公は延々と好みでもないストーカーチックなメンヘラ女性に告白を迫られ、キスを迫られたり、襲い掛かれたりするんですが、その際うまくコミュニケーションができないと、ゲームマスターが先に「リロード」(だったかな)してしまう。そして最初に戻る。そして、何度も繰り返していくうちに、自分も相手も「変わっていく」んですね。付き合えないって断ってみたけど、告白を受け入れてみる、とか、キスを迫られたけど。なんか言ってみてどうにかかわすか、とか。

で、ゲームマスターが一旦退場するタイミングなんかも良いな、テンポもいいな、と思いました。ラスト、ゲームマスターの正体が、青年が小さい頃に過ごした「(実は見えていた)妖怪」、キーワードが「ありがとう」というのは、まあ、「ありがちだな…」とは思いましたし、なんで妖怪が平衡世界操れるんだ?みたいなツッコミもありますが、そもそも「ゲームもの」の物語と言うのは、そういう「お約束でなりたっている」ものですよね、どの創作も。「理不尽な状況に主人公が置かれて、どう行動していくか、解決していくか、って話の流れ。それがきちんと受け入れられるような本だったと。なのでとても見ていてわかりやすく楽しめたし、良く出来ているな、と思いました(何様)。こちらは劇作家、演出家志望の方かな。

全体としては以上です。

わたしは主宰の鴻上尚史さんの劇作がすきで、芝居も見に行きますし、著作も何作か読んでいます。演劇に興味がなくても、日常的にコミュニケーションンに困難や悩みを抱えている、というひとは沢山いると思います。そういう人にも、鴻上さんの著作の数々はおすすめです。

コミュニケイションのレッスン (だいわ文庫)

孤独と不安のレッスン (だいわ文庫)

最近は小説も書いているようで。

青空に飛ぶ

(うちあるけどまだ読んでいない…)

鴻上尚史さんがなさっている演劇公演でも、虚構の劇団はチケットが2000円しなかったりとかなりリーズナブルです。ただ、今回について言えば、発表会なので質は、これまでに書いてきたように、バラツキがあります。でも気軽に楽しむにはいいんじゃないでしょうか。次やるのはまた来年かな?宝塚等他の、いわゆる商業演劇と違って、チケットが取れない、とりにくい、等はほぼありません。鴻上さんは演劇界では知らない人はいない程有名な方なので、ご興味があったら是非ご覧下さい!

虚構の劇団

虚構の劇団 | 虚構の劇団って何?

ではナギナリコでした~

 

 

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