ENTREVUE BLOG

「ナギ」ですが時にはあらぶり「エンタメ」「すきなこと」について書く。演劇・宝塚・映画・本、アート・旅行等娯楽、趣味の話とたまにの真面目コラム。

古典的名作だけどちょっと色々惜しい@鵜山仁演出 文学座公演『怪談 牡丹灯籠』

今日はとても久しぶりに文学座の公演を観てきましたので、そのレビューをしたいと思います。ナギナリコです、こんばんは。まずはあらすじから。

 

旗本飯島平左衛門の娘お露はふとした機縁で浪人萩原新三郎を見染め、恋い焦がれた末に焦がれ死に、乳母のお米もその後を追った。それを伝え聞いた新三郎は念仏三昧の供養の日々を送っていた。折しも盆の十三日、死んだと聞いていたお露とお米が幽霊となり、牡丹燈籠を提げて門口に立った。二度と会えぬと思い詰めていた二人は激しく燃える。お露がこの世の者でないと知ってか知らずか…。 一方、平左衛門の妾お国は、隣の屋敷に住む宮野辺源次郎と人目を忍ぶ仲。家督を早く乗っ取りたく焦った二人は、奸計を巡らしつつ閨(ねや)の中。そこを平左衛門に見つかるが、返す刀で平左衛門を切り殺し、江戸を出奔する。 さて、新三郎は夜毎お露と逢瀬を重ねていたが、この家に出入りをする伴蔵は、日毎に痩せ細る主人を見て、これでは取り殺されると、新幡随院の良石和尚から死霊退散のお札を貰い、戸口や窓に貼りつけ、新三郎の海音如来の尊像を身に付けさせる。――中に入れず牡丹燈籠は空しく萩原の家の周りを漂うばかり――新三郎に逢えぬお露の嘆き悲しみを見て、不憫に思ったお米は伴蔵にお札と如来像を取り除いてくれと頼むのだった。それを知った女房お峰の入れ知恵で、百両の大金と引き替えに伴蔵がお札を剥 がすと、牡丹燈籠はうれしげに高窓に吸い込まれて行った。それから時が流れ、また、盆がやって来た。 ところは野州栗橋宿。そこには、関口屋という大店の旦那におさまった伴蔵とお峰の姿があった。

 

 

早坂直家  石川 武  大原康裕  沢田冬樹  釆澤靖起  相川春樹

富沢亜古  つかもと景子  岡 寛恵  梅村綾子  髙柳絢子  永宝千晶

www.bungakuza.com

『怪談 牡丹燈籠』と言えば、三遊亭円朝の傑作落語を舞台化した、古典的名作。脚本、大西信行、演出、鵜山仁。

2009年にシス・カンパニーで上演されていますが、その時は演出はいのうえひでのりさん。瑛太さんが初舞台でしたね。

SIS company inc. Web / produce / シス・カンパニー公演 怪談 牡丹燈籠

 わたしはタイトル位しか知らなくて、初めて観劇しました。歌舞伎でも定番の演目なんですね。納涼に良さそう。

怪談 牡丹燈籠 | 作品一覧 | シネマ歌舞伎 | 松竹

原作も青空文庫で無料で読めるので、早速DL。あとで読もうと思います。

怪談牡丹灯籠 04 怪談牡丹灯籠

幕開き、寄席のように口上から始まります。そしてお露とお米の話、恋仲新三郎との馴れ初め、恋の顛末、みたいなものが語られ、幽霊となったお露とお米が新三郎を訪ねるシーンからはじまります。話が進むと、あと二組の男女が登場、隠れて恋仲のお国と源次郎、伴蔵とお峰の夫婦。伴蔵はお米(の霊)から新三郎の家のお札をはがすように頼まれ、お峰が機転を利かせ、100両でそれを請け負う。そして…なって(舞台観ると怖くて楽しいところ。上のあらすじ読むとわかっちゃいますが)一幕終、二幕もまた口上から。100両を元手に荒物屋の旦那とおかみさんになった伴蔵とお峰の場面が始まります。伴蔵は芸者になったお国と良い仲になっており、お峰はそれが気にくわない。そうしているうちに…

と全体の流れとしてはこんな感じ。

舞台装置は大小の灯籠が正面やや下手よりに大きなもの(浮世絵の女性?)が一つ、更に下手に小さめなものが一つ(北斎の髑髏の浮世絵)、右手に3畳位の新三郎の部屋があり、これがのちのち伴蔵とお峰の部屋になったりしていました。これが、盆は地方公演もありますし、ないんですが、大道具さんで回して転換したりしていましたね。二幕は灯籠ではなく、柳中心のセットになる。

次に役者の感想ですが、この舞台、特に大きい役は伴蔵とお峰、あとは口上、語り部役も務める久蔵です。抜群に上手かったのが、伴蔵役の早坂直家さん。とても芝居がナチュラルでいながら、伴蔵の憎めない軽さ、愛嬌みたいなのもあり、客席あしらいも上手い…!そして二幕のクライマックスの恐ろしい迫力ときたら…!場を締める力も持った、素晴らしい演じぶりでした。お峰は富沢亜古さん。幽霊になったお露の乳母お米、伴蔵の妻お峰役の二役で、特にお峰は二幕から舞台が変わり荒物屋の女将になるんですが、幽霊のお米と二幕からが良かったです。涼やかで綺麗な声で、幽霊のお米のドスを利かせた感が良かった。ちゃきちゃきした一幕のお峰は、どうも伴蔵との間に気の置けない、貧しいけれど仲良い夫婦、みたいな関係性が必要なんですが、声もあるのか、そのベタベタした感じはあまり受けなかったかな。でも二幕の女将さんになって、凛とお店を仕切ってる感は良かったです。二回早変わりの場面があって、1分位なんですが、あまりにも自然にやっていて、周りの観客が気付いたかなあ…体感だと1分って結構長くて、派手な演出見慣れてると「おおっ、凄い!」とあんまりならないんですよね。多分周りも観客も、事前にリーフレット読んでないと気付かなかった人も多そうです。歌舞伎だと拍手入るのだろうか?もっと役作りに差を出してもいいのかな。久蔵と口上や場転等狂言回し役も兼ねたのは大原康裕さん。…うーん、ぶっちゃけ、まず開幕から客席の空気を掴み切れていなかった、かな…。市民ホールでの鑑賞で、通常の劇場より、横に結構広い。空間も結構大きい。音声さんの腕かもしれませんが、もっと存在や声を張らないと、開幕から観客を「怪談 牡丹灯籠」の世界に引き込めない。寄席だったらあの声量や芝居でもいいのでしょうが、市民ホールなので。最初、観客が芝居の世界にしばらく入りこめず、声が空中分解してしまっていました。演出の鵜山仁さんはそういうことは想定していたのかな。そして、久蔵役では笑いもとっておりましたが、語り部役、この芝居のラスト、メタ的な構造では明らかに存在が弱い、と思いました。メタの部分は、観客がわかってもわからなくてもいい部分なのかもしれないけれど、口上を入れ、舞台を引っ張って行く狂言回しというオイシイ役なのに、存在が弱いのはちょっと辛い。押し引き出来ないと。

他に… 新三郎役・釆澤靖起さん、お露役・永宝千晶さんあたりは芝居が若い、かな…そんな目立って下手、とかではないんですが、幽霊と、新三郎はそれに取りつかれる前、後、お露が新三郎を…の場面や、ちょっとした所作がまだ洗練されていないな、と思いました。お国役の岡寛恵さん、美人で声も芝居も艶っぽくて良かったです。

全体的には、さすが何度も再演される本なだけあって、本当よく出来ている話だなあ、と思いました。ただ、いわゆる市民ホールみたいなところでやるのなら、普段演劇を観慣れていない、落語や歌舞伎も見たことない層が観に来ると思うんですよ。そういう人たちを地方公演では今後の演劇ファンとして、創客していかなければならないのだから、もっと芝居と演出をわかりやすくしてもいいんじゃないだろうか、と思うのです。今回で言えば、先の口上の客席の空気を掴めていないさま、お米とお峰の早替え、ひとりで何役も兼ねている、ラストのメタ的な部分…そのすべてを、芝居観慣れていない一元の客にわからせろ、とは言わないですが、もう少し親切でも良かったんじゃないでしょうか、鵜山仁さん。文学座の俳優さんたちは皆さん、そこそこ達者でいらしたと思いますが。

感想としてはそんな感じです!本は面白かったですけどね!

 

今後4月末までは関東各地で地方公演があります。

怪談 牡丹燈籠|文学座

東京公演:
新宿南口紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA
日程:2018年5月25日(金)~6月3日(日)

地方公演:神奈川県・近畿
日程: 2018年6月~7月(予定)

だそうです。話自体は面白いですし、初見でも割と楽しく観られる作品だと思います。暑くなってくると、納涼にも最適ですしね。

是非チェックしてみてください!では、今回はこれで。

にほんブログ村 演劇・ダンスブログへ
にほんブログ村