ENTREVUE BLOG

「ナギ」ですが時にはあらぶり「エンタメ」「すきなこと」について書く。演劇・宝塚・映画・本、アート・旅行等娯楽、趣味の話とたまにの真面目コラム。

壮大な祝祭劇と一見客に優しいショー@宝塚月組『鳳凰伝』-カラフとトゥーランドット-/『CRYSTAL TAKARAZUKA-イメージの結晶-』

今日は少し前の月組全国ツアー公演、「鳳凰伝/クリスタルタカラヅカ」のレビューをお届けします。だいぶ前にいつも通りそれなりの長さで書いたのに、昨日見たら消えてました、大ショックです、ナギナリコです。

 

グランド・ロマンス
鳳凰伝』-カラフとトゥーランドット
脚本・演出/木村 信司
トゥーランドット」は18世紀の劇作家カルロ・ゴッツィ作の寓話劇であり、宝塚歌劇においては白井鐵造が1934年に作品化、1952年には春日野八千代による再演で話題を呼びました。2002年には、和央ようか花總まりを中心とした宙組が21世紀版と銘打ち『鳳凰伝』—カラフとトゥーランドット—を上演。脚本・演出を担当した木村信司が、第12回社団法人日本演劇協会賞を受賞するなど、好評を博しました。それから15年の時を経て、珠城りょうと愛希れいかを中心とした月組全国ツアーメンバーが、高らかに愛の力を謳いあげる、壮麗でドラマティックな物語に挑みます。

ショー・ファンタジー
『CRYSTAL TAKARAZUKA-イメージの結晶-』
作・演出/中村 暁
「ショーはイメージの結晶」というコンセプトのもと、“情熱の結晶”“虹の結晶”“夢の結晶”などのシーンで構成した、ダンスを中心にしたエネルギッシュなショー。宝塚歌劇が100周年を迎えた2014年に上演された、明るく躍動感溢れるこの作品を、珠城りょうを中心とした月組が全国ツアーバージョンとしてお届け致します。  

月組公演 『鳳凰伝』『CRYSTAL TAKARAZUKA-イメージの結晶-』 | 宝塚歌劇公式ホームページ

 

鳳凰伝かの有名なオペラ『トゥーランドット』を原作とし、映像で宙組博多座版を見た覚えがあります。大劇場よりはスケールダウンでしょうが、話は今一つ要領を得ないところがあるものの、楽しく拝見しました。

月組全国ツアー版では、舞台装置を大きく変更。上手から下手に渡る大きな城壁(通路)をかなり低めなものに。また背景をいわゆる書き割り的なものにしており、おおきな鳳凰と龍の絵が芝居の半ば~後半部分位かな?に登場します。誰作の、まではわからなかったのですが、大きさ(拡大している)といい強い筆致といい、とてもインパクトがありました。背景のインパクトがあり過ぎると、演者よりまず背景を見てしまうきらいがありますが、全ツ版としては良い改変ではないでしょうか。珠城さんのカラフは、割と手堅く、歌はやはりやや上がり切らない音がたまにあるのですが、無難にこなしていたと思います。カラフというキャラクターは、女性に「あなたの命はわたしの愛に値しない」などと言う人によっては鼻に付くような台詞を言ってのける、誇り高い人物です。こういう台詞を嫌味ではなく、真っ直ぐ説得力を持って言えるのは、珠城さん生来の正当性、真摯な持ち味に加え、ご本人の芝居心所以でしょうね。相手役、ちゃぴちゃん(愛希れいか)は氷のような冷たいトゥーランドット姫。本来はけなげで愛らしい娘役さんですけれど、次々と求婚者の首を切る冷徹な姫を演じきっていました。(彩音星凪くんのイケメンぶりが輝る)特に、カラフが謎解きの答えに詰まる場面で、トゥーランドットが絡みつくように妖艶に踊るのですが、そこが素晴らしかった。二番手格バラクには月城かなと。舞台上で○○、おいしい役ですが、若干キャラクターの描写が弱いので、そこを芝居で埋めなくてはならない。バラクのクライマックスは良かったと思います。珠城さんとの並びも、(実は)誠実・朴訥ペアみたいな感じでいい。二人とも地味になり過ぎないよう押し出し良く頑張って欲しいです。他に印象的な役所としては娘役ニ、三番手格アデルマ姫に麗泉里さん。美声で歌ウマな娘役さんですが、抜擢に緊張しちゃったかな。感情の振れ幅が非常に大きい役ですので、芝居でもっと見せて欲しい。その点海乃美月さん演じるタマルは役柄や衣装自体は地味なんですが、良かったですね。タマルのカラフに対する想いがきちんと伝わってきて、キャリアの重みを感じます。紫門ゆりやさんと、千海華蘭さんのタンとトンはちょっと勿体無い役柄です。出落ち、というか。もう少しキャラクターとして書きこめなかったのか…。この公演後のサロンコンサートでご卒業された、ティムール王は箙かおるさん。流石存在感を出すのが上手い。笑もとる。あとはまゆぽん(輝月ゆうま)の皇帝役はハマリ役でしたね〜こういう役はもうお手のもの。れんこん(蓮つかさ)のゼリムは結構大きい役なんですが、押し出しも印象も割と薄い。口跡はいいのでもっと頑張れ~!

初演、博多座公演との違いはそこまでわからなかったのですが、ラスト「All for One」みたいな台詞が足されていました。「共に生きよう」と言った類いの、もののけ姫か、って感じですが。木村信司さんはこれまでオペラ作品の宝塚歌劇化に意欲的に取り組んでおり、他にも「王家に捧ぐ歌」や、「愛のソナタ」「炎に口づけを」等発表しています。一番の名作は「王家に捧ぐ歌」かな。次に来るこの鳳凰伝は意欲作、といった趣でしょうか。作品としては全国ツアーの会場でもあまりスケールダウンせず、華やかで迫力ある演目だと思います。が、本のキャラクター造形にやや難あり、話がわかるような、わからないような、掴めない感じがある作品でもあります。あとコーラスの迫力が凄いのですが、わたしのいた2階席ではそれにソロが入るとほぼ聞き取れない感じでした。音響は結構いいホールだと思いますけどね、オリンパスホール八王子。響き過ぎちゃうのかな。

鳳凰伝、トゥーランドットは、要は愛にまつわる寓話的な話だと思います。ただ、昔赤坂アクトシアターこけら落とし公演で宮本亜門演出「トゥーランドット」を見た時も、衣装は華やかだけど、話やキャラクターはイマイチよくわからないな、カラフ(岸谷五郎)のキャラ弱いな、と思ったので、そもそも原作オペラ自体が祝祭劇的なもので、細かいところは?だけど、歌が良かった!豪華で綺麗だった!で、正解かもしれません。ちなみに当時は宦官役の早乙女太一の妖艶さ、中村獅童の首切り役人兼敵役が華で岸谷五郎を食っちゃってたのが印象的でした。宝塚版については、また全ツ等で再演があるならもっと本の改善をしてほしい気もします。

 

クリタカは中村A先生こと中村暁さん演出。場面場面の繋ぎは若干弱いんですが、「シンデレラ」「ドールオペラ」等芝居がかった場面が多く、全ツで初めて宝塚を観る方にも「優しい」ショーではないでしょうか。私自身も結構好きなショーです。当時美弥るりかさんが演じていた「シンデレラ」は月城かなとさん担当。くらげちゃん(海乃美月)との並びが良く、可愛らしい場面になっていました。くらげちゃんは美人さんなんですが、時たま地味に見えることがあり、れいこちゃん(月城さんのあだ名)とだとそれがないですね。あとは前トップの龍真咲さんと珠城さんの持ち味の違いが面白い!ショーの始まりの歌から趣きが異なる。(「いえぇぇす」ですよ、わかる方笑)珠城さんは歌は引き続きもう少し頑張って欲しいところですが、二階席にまできちんと目線を配り、トップ就任後3作目、ということで、すんなりゼロ番がハマるようになってきてました。でも鬘のセンスが毎回よろしくないので苦笑、自己プロデュースを頑張って欲しいかな!

全ツなので、ご当地アドリブがあるんですが、わたしは八王子公演で、れいこちゃんが「シンデレラ」で「これ駅前のセレオで買ったんだ」まゆぽんが継母で歌うところで鳳凰伝の皇帝の風に歌ったりしていました。継母の鬘のパワーアップぶり(でかいアフロ)も凄かった!

全ツなので、ご当地出身者の紹介があるのですが、まさに八王子出身の夏風季々ちゃん!

kageki.hankyu.co.jp

その日一番の拍手を贈られました。全ツはわたしは見送ることも多いのですが、全ツならではの新鮮さもあります。今回はショーで開演後暗転した後、ご年配のご夫婦が「いいね」「そうだね」と雑談されてて(ほんとはダメですよ!)微笑ましくなってしまいました。また、全ツも楽しみたいです!

 

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