ENTREVUE BLOG

「ナギ」ですが時にはあらぶり「エンタメ」「すきなこと」について書く。演劇・宝塚・映画・本、アート・旅行等娯楽、趣味の話とたまにの真面目コラム。

全体的にハイレベル。ただ…@宝塚花組新人公演『金色の砂漠』

宝塚専用チャンネルスカイステージにて、
昨年2017年年初に行われた金色の砂漠」の新人公演が放送されましたのでレビューしたいと思います。
 
新人公演というのは、西→東での公演中にそれぞれ一公演だけ、すべて研究科7年以下の生徒たちによって行われる公演です。この公演で主演すること、ヒロインを務めることが、トップスター、トップ娘役就任のための第一関門、と言われています。また演出家もそうで、だいたい入団してから演出助手が大劇場の演出家としてデビューするまで10年程度かかりますが、本公演の演出助手や新人公演の演出等を通じて、鍛えられていくわけです。
 
本公演のレビューはこちら。
主演は『ME AND MY GIRL』に続いて1.5回目のあかちゃん、綺城ひかり。上背があり、OGの元星組トップ湖月わたるさんに似た容姿、歌もうまいですし、お芝居心があり、素のキャラクターも濃くて面白い生徒さんです。映像だけでは判断しきれないのですが、やはり新人公演なので前半、やや押し出しが弱い。これは花組の本公演での舞台姿を観ても感じたことなのですが、大人しめの役やキャラクターだと埋もれてしまうんですよね。舞台に立っているだけで目立つヴィジュアルをしているのに、もったいない!後半のギィが奴隷から盗賊に身をやつし、復讐の歌を歌うところからはとても良かったです。明日海りおさんのギィみたいな苛烈さはなくとも、生来の優しさ繊細さから反逆の気持ちが芽生えていく様に説得力がありました。歌はやや震えてましたが、これくらい、熱さ、激しさがあっていい。
 
ヒロインの城妃美伶ちゃんは新人公演ヒロインも四度目、別箱(宝塚専用劇場以外の公演)でのヒロインや準ヒロイン経験もあり、すっかり落ち着いた舞台姿を見せてくれています。歌や娘役芸は正直本役の花乃まりあさんより上かと思いますし、本公演で演じても、それなりの出来で見せてくれるであろう安定感を感じます。ただ、このタルハーミネという役には、花乃まりあちゃんの苛烈さ、熱さが必要だな、と思いました。上田久美子さんのあてがきですからね。しろきみちゃんのタルハーミネは賢く品よく良い子っぽいので、砂漠に飛び出すとか、ぶっ飛んだことしなそうなんですよね。誇り高い感じは伝わりましたが。この彼女の解釈に周りの経験やスキルが追い付いていないので舞台で見ると本公演よりスケールダウンしただろうな、と思います。クライマックスの金色の砂漠での二人のやり取りはとても良かった。
 
王妃にして実はギィ(イスファンディヤール)の実の母、アムダリヤは春妃うららちゃん。美しく、手堅い。が、もうひと押し欲しい。ラスト金色の砂漠を顔も見せないで歩くさまは「普通の人」感が出ていてはいけないかと思うんですが、ただ歩くだけで「さまよえる魂感」が出ていたゆきちゃん(仙名彩世)は凄いんだな、と。難しい役ですけどね。この公演で美味しい役、本役鳳月杏のジャハーンギール王は飛龍つかさ。次の「邪馬台国の風」で新公主演していますが、骨太な男くささがあって良い。死に様も見事でした。
二番手芹香斗亜のジャーに、亜蓮冬馬。上手い。ヴィジュアルも良く、歌も歌えて、押し出しや華もあり、芝居心もある。キキちゃんとはまた違った温かみや包容力があって、あかちゃんとの並びが良かったです。結構花組下級生男役では目立つので、新公主演こないかな。現在二番手、当時三番手の柚香光のテオドロスには帆純まひろ。ヴィジュアルはいいし、役の解釈は割と的確なんですが…どうもスキルが追い付いていないかな。タルハーミネとギィが審問にかけられる場面、本役れいちゃんは感情を露わにして止める感じでしたが、声が割れていて、どうもうまく客席に伝わってこない。帆純くんほもう少し説得するような感じで、そこが良かったです。
あとは…新人公演と本公演で大きく違うのが、子ども時代を別の人に配役したこと。タルハーミネ、音くり寿、ギィ、華優希。これがですね…役が増えることは新人公演にはいいんでしょうが、イマイチ成長した二人と繋がっているようで繋がっていないんですよね…おとくりちゃんは100期首席なだけあって、なんでも出来る上手い子ですが、どうしてこんな荒々しい子役芝居をさせたかな…これは演出家指示なんでしょうか。おとくりちゃん、個人的にはもう一度、きちんと新人公演ヒロインをさせてあげて欲しいのだけど…。華優希ちゃんは、ここから次ね「邪馬台国の風」の卑弥呼で新公ヒロイン、「はいからさんが通る」の紅緒で別箱ヒロイン、「ポーの一族」メリーベルへの抜擢…と繋がっていく訳ですが、お芝居心があるな、と思いました。少し小さくまとまってますが、あかちゃんのギィの包容力、繊細さ、みたいなものは感じました。
 
他に…この公演が96期ラスト長の期(新人公演卒業の学年)なんですが、96期の皆さんは皆上手かったですね。特にピピ役優波慧、ビルマーヤ役朝月希和、ラクメ役乙羽映見。割と本公演でも通用しそう。他に脇役で上手かったのは…97期矢吹世奈くん!!家庭教師ナルギス役!いやらしい下卑た感じが凄く出ていて上手かった!彼女はエリザベートでルドルフ(幼少時代)をする位期待株だったんですが、「ポーの一族」を持って宝塚をご卒業、潔い決断でした。
98期の茉玲さや那ちゃんも本公演や別箱で子役を演じる機会が多いんですが、シャラデハ役も良かった!本当たまごみたいなお顔(あだ名がたまごちゃん)もかわいいし、上手いし、もっと色んな役で使ってあげて欲しいな。
 
ということで、気になった子を中心にレビューしましたが、全体的にはハイレベル。ただ、子役で役を増やしたところが繋がっていないのと、オリジナル作品なだけに各々本公演と役作りを変えてきているんですが、その役作りにすると、全体としてどうなんだ、という点が気になりました。これは演出家の仕事でもあると思うので、新人公演担当の町田菜花さん、もう少しでバウ公演デビューかと思います、頑張って下さい~(どこ目線)上田久美子先生は割と厳しめな先生だと色々漏れ聞こえてくるんですが、結構口を出したのかな?まあ、いずれにしても気になることはあれど、花組の下級生は有望ですね。あと、花組の97期~100期男役はかなり人材豊富で詰まっている印象を受けるので、将来的には誰か組替え必須かもしれません。誰が新人公演主演を勝ち取り、路線スターとして残っていくか…そこが宝塚の厳しいところでもあり、観客としては楽しく観てしまうところでもあります…これからも見守りたいと思います。

 

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