ENTREVUE BLOG

「ナギ」ですが時にはあらぶり「エンタメ」「すきなこと」について書く。演劇・宝塚・映画・本、アート・旅行等娯楽、趣味の話とたまにの真面目コラム。

名匠スティーヴン・スピルバーグによる硬質で濃密な社会派作品@『ペンタゴン・ペーパーズ』

こんにちは、ナギナリコです。

映画は定期的に観に行きますが、たまに全然ノーマークの映画を観に行く機会があります。この作品はそんな時、出会った作品。ではご紹介します。


『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』予告編

国家の最高機密文書<ペンタゴン・ペーパーズ>。
なぜ、アメリカ政府は、4代にわたる歴代大統領は、30年もの間、
それをひた隠しにしなければならなかったのか―。
1971年、ベトナム戦争が泥沼化し、アメリカ国内には反戦の気運が高まっていた。国防総省ベトナム戦争について客観的に調査・分析する文書を作成していたが、戦争の長期化により、それは7000枚に及ぶ膨大な量に膨れあがっていた。
ある日、その文書が流出し、ニューヨーク・タイムズが内容の一部をスクープした。
ライバル紙のニューヨーク・タイムズに先を越され、ワシントン・ポストのトップでアメリカ主要新聞社史上初の女性発行人キャサリン・グラハム(メリル・ストリープ)と編集主幹ベン・ブラッドリー(トム・ハンクス)は、残りの文書を独自に入手し、全貌を公表しようと奔走する。真実を伝えたいという気持ちが彼らを駆り立てていた。
しかし、ニクソン大統領があらゆる手段で記事を差し止めようとするのは明らかだった。政府を敵に回してまで、本当に記事にするのか…報道の自由、信念を懸けた“決断”の時は近づいていた。

【映画パンフレット】ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書

映画『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』公式サイト 大ヒット上映中

 

ベトナム戦争中の兵士たちのシーンからはじまります。

政府系の職員(このポジション曖昧です、すみません)がベトナム戦争の兵士達に追従し、ベトコン、南ベトナム解放戦線との激しい戦闘を目の当たりにします。

彼はタイプライターを使い文書を作成、また、本国に戻った後機密文書を持ち出しひそかにコピーをしそれをある人物に手渡します…

ここからネタバレしますのでご注意下さい。

これは前半の部分ですが、なんといっても盛り上がるのは後半一時間!

とにかく、絵的に派手な出来事は起こらないのですが、ひたすら畳みかけるように、新聞社内、間、顧問弁護士とのやりとり等、政治的駆け引きが続きます。メリル・ストリープワシントン・ポストの社主・発行人、キャサリン・グラハム役。元々夫が継ぐはずだったのに、夫の早逝により、一介の主婦がワシントンポストにポジションを得ます。初めの方でケイ(キャサリンの愛称)が会議でろくに発言も出来ずにいるシーンがさしこまれる。とにかく、「普通の」「一般的な」女性です。トム・ハンクスワシントン・ポストの編集主幹ベン・ブラッドリー役。他にワシントン・ポストの編集局長等、数人によってこのペンタゴン・ペーパーズを記事にするのか、どうなのか、その駆け引きがずっと続く。場面設定も限られていて、新聞者、ベンの自宅、ケイの自宅、パーティー会場等ですが、ほとんど絵図らが動きません。ケイは一刻を争う緊迫感の中、ついにある決断を下します。目に力が入って潤んだ瞳をして。そして駆け引きが続きながら、ラストまで一気に向かう。1970年代なのでパソコンなんてありません。タイプライター、判を使って印刷するの機械(なんて名前でしたでしょうか)輪転機等、かなり大がかりな作業になる。その重々しい機械の存在感が終始暗いトーンの画面に更に重厚感を与えています。時にレモネードのくだりなど、そこはアメリカ映画なのでユーモアは忘れない。けれど、そういう面はかなり抑えて、最後まで役者の演技と、台詞、テンポ感で見せていく。スピルバーグというと、わたしはやっぱりE.Tやジョーズのイメージなんですが、こんな硬質な社会派の作品も撮るのですね。非常にしっかりした作りの作品だな、と思いました。

公文書改竄にまつわるメディアと政府間の諍い…あれ、どこかで聞いたことあるような。戦争で犠牲になるのはトップではなく、三角形の一番下の、若い、働き盛りの(特に男性の)兵士達ですよね。男性を奪われた家族や女たちも被害者です。

「(戦争を終わらせないのは)戦争に負けたと国民に知られたくないからだ(意訳)」みたいな政府高官(だったかな?)の台詞があり、「まあ、そうですよね…あなたたちは安全なところで国民を駒として扱ってるんですね…いつの時代もそうですよね…」と思いました。

非常に今日的な話題でもありますし、いま日本に住むわれわれは観たほうがいい映画だと思いました。

ラストが結構あれ?あれ何?どういうこと?って声がちらほら聞こえたんですが、

ウォーターゲート事件 - Wikipedia

ですね。日本人だと、世界史で習う程度なんですが、ここはアメリカの歴史上重大な事件なんでしょうね。

メリル・ストリープトム・ハンクスもこれまで数々の名演を見せた名俳優ですが、今回の役も良かった!ケイ(キャサリン)は「ふつう」の「一介の元主婦」「男社会の中の女性」というところがポイントで、メリル・ストリープ自身は結構強い女性のイメージもあると思うんですが、先述の通り繊細な演技も見せてくれました。トム・ハンクスは芝居の間がすごくいいですね。

というわけで、偶然の出会いでの鑑賞でしたがとても良かったです!

全体的に硬質な印象なので、エンタメより落ち着いて映画が楽しみたい方におすすめ。社会派作品なので映画通好みの作品だと思います。

 

解説『ペンタゴン・ペーパーズ』。1971年のジャーナリズムが映し出した現在地【小野寺系】 | ciatr[シアター]

 

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