ENTREVUE BLOG

「ナギ」ですが時にはあらぶり「エンタメ」「すきなこと」について書く。演劇・宝塚・映画・本、アート・旅行等娯楽、趣味の話とたまにの真面目コラム。

小池修一郎の座付き作家の妙、極まれり。誰でも楽しめる王道エンタメ!@宝塚月組『All for One』

今日は少し前の公演ですが、珠城りょう、愛希れいかコンビの月組の代表作のひとつどあろう、宝塚発・オリジナルミュージカルの傑作、『All for One』のレビューをお届けします。ナギナリコです、こんにちは。

 

三井住友VISAカード シアター
浪漫活劇(アクション・ロマネスク)
『All for One』
~ダルタニアンと太陽王
脚本・演出/小池 修一郎

世界の古典・デュマの「三銃士」をもとに、新たな発想で描くロマンチック・アクション・ミュージカル。舞台は太陽王と呼ばれたルイ14世が治めるフランス。銃士隊の新入りダルタニアンは王の剣の稽古相手に任命される。しかし王はダンスのレッスンに熱中し、剣術には興味を示さない。ある日ダルタニアンは、ブルボン王家を揺るがす王の秘密を知ってしまう…。
ルイ14世の為に立ち上がるダルタニアンの愛と勇気の冒険を、共に戦う三銃士との友情を交え、壮大なスケールで描き出す浪漫活劇。今なお世界中で愛される「三銃士」が、小池修一郎の脚本・演出によって新たな物語として宝塚歌劇の舞台に登場致します。

 

月組公演 『All for One』 | 宝塚歌劇公式ホームページ

 

「たのしかった!!」

「面白かった!」

「観に来て良かった!」

「またみたい!!」

そんな風に心から思えるエンタメって意外とないですよね。

だけど、この『All for One』はそんなエンタメ作品でした!

厳選して買う映像ディスクも買ってしまいました…

月組宝塚大劇場公演 三井住友VISAカードシアター 浪漫活劇  『 All for One 』 [DVD]

あるある・お約束満載です。小池修一郎先生(宝塚ファンは思わず演出家を先生と呼んでしまう習慣がある)は、もともとシェイクスピア作品がお好きなのか、学んでいるのかその影響を感じます。

「間違いの喜劇」や「十二夜」であるようなキーキャラクターが「〇〇」。どんどんネタバレしていくのでネタバレ見たくないわ!って方は公演が終わってるとはいえ、戻ってくださいね。ただ『All for One』のおもしろさはネタバレでどうにかなるものではありません!開始20分でネタバレの内容が分ります。若きトップ珠城りょうさんの代表作が早くも誕生です!心優しく、暖かく、強く一途なダルタニアン。わたしが珠城さん落ちした作品でもあります…笑 珠城さんの持ち味である正統さ、無骨さが良い方向に出ている。さすが座付き作家の仕事だと思いましたね。

 

愛希れいかさん、愛称ちゃぴ。ちゃぴちゃんの持ち味は健やかさ、けなげさ。そして、男役からの転向組であるからこそ、普通の娘役にはないスケールの大きさを持っている。男役の王と娘役王女の二役なんてなかなか出来ないですよ!(ネタバレ)そして月組の層の厚さを示した作品でもあります。二番手美弥るりかさんは色男キャラアラミス、三番手で雪組より組替え組の月城かなとさんは悪役のベルナルド。進撃の暁千星さんは大酒飲みのポルトス、宇月颯さんは冷静沈着なアトス。専科から芝居功者の一樹千尋さんと、女役で登場、色っぽくチャーミングな沙央くらまさん。ぴったり!あてがきが上手いとこうも充実の座組みになるのですね。

セットはハプスブルグの双頭の鷲を小道具や映像に、背景はユリの紋章を赤く使ってダイヤの模様に。ポップで楽しい印象。音楽はフレンチミュージカル風、あのミュージカルの曲っぽいの、ヒップホップ等、時代考証にとらわれず使い、いかにも小池修一郎!なメドレーです。演出は場面転換がうまい!盆がぐるぐる、セリの上下、そして一幕ラストの盛り上げはスカピンや1789を思わせます。あとは殺陣や擬闘が素晴らしい!運動神経・体育会系の月組ですね!剣先に音入れているのも新感線みたいでかっこイイ!そんなこんなでとっても楽しく、劇場に行き、帰ることができた作品でした。また、別の組でも再演して欲しいな~!

 

ところで、Twitter上ではこの作品、ジェンダー視点的にどんなんだ、という議論がいくつかありました。

・「女には政治なんかできないってこと?(下に見てる)」

・「アラミスがダルタニアンと国王陛下に男か…?そっちの方は専門外だ、っていうのは無神経」

・「モンパンシェを独身女性としてからかってる」

・「リュリ(振付師)が同性愛者なのを笑うのはおかしくない?」

これが大体主なものだったように思います。

 

私個人的意見としては

・ルイーズは政治がダメダメな国王ではなく、親政をしているだけで政治的無能というところまでは描かれていない。ただ、剣術よりバレエに夢中、と。この作品ではルイの自分の思うように生きられないもどかしさを主軸に描いている。

・同性愛が当時もあったとしても少数、もしくは隠すようなものだった可能性も。驚きを持って受け止められること自体は、(やはり絶対数としてまだまだマイノリティではあると思うので)そこまで神経質にならなくていいのでは。(もちろんフラットに人として接するべきですが)

・モンパンシェ夫人は20代後半、20代半ば〜から子ども(世継ぎ)を沢山うむことが求められた時代に、この年代で独身女性であることは婚期が遅い、と取られても仕方はない。

・リュリは…笑ったのは同性愛者というよりチャーミングだったのでは?

という感じですね。あと私はタカラヅカだからこそ許される「ラッキースケベ」みたいな演出がちょっとニガテなので、そこはな~…という感じでした。あとモンパンシェの満月ダンスはかわいいけど、性的嗜好は他人がどうこう出来るものではないのでは?という点かな。

まあ、宝塚だけでなく日本のジェンダー観ってかなり遅れていると思うので、SNS上でこういう議論がどんどん巻き起こるのは良いことだと思います。その声が演出家や劇団側にもっともっと届きますように。

さてさて。フィナーレ、大階段に座る珠城さんのかっこいいこと!横のご婦人がかっこいい……(はあと)と呟いていたのが印象的でした。「そうでしょう、うちの(どちらのですか)珠城さんかっこいいでしょ?!」と珠城ファン(になってしまった)のわたしは鼻高々なのでした。

グランドホテル→All for Oneと月組の強さと作品運の良さ、座組みの充実を感じる一作でした!たのしかったぁ!

 

 

にほんブログ村 演劇・ダンスブログ 宝塚歌劇団へ
にほんブログ村